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｢ああ....でも良かったなぁ｣
手に持つ画面に小さな少年がそう言っているのが映る
それを見るAの頬には大粒の涙が伝っている
彼女が涙を流すのはこれが人生で初めてであった
見ていたのはゴールデンカムイという漫画
画面に映る少年の名は尾形百之助。
｢尾形、、、｣
Aはそう呟くと涙も拭かずにベッドにうつ伏せになって倒れ込んだ。
｢私は尾形のことがこんなに好きなのに。祝福されてない道なんて、あなたには無いのに。｣
今年で高校3年生となったAは新学期の疲れからか、
だんだんと声を萎まながらもあっという間に深い眠りについた。
｢おい！誰か縛るもん持ってこい。起こすのはそれからだ。｣
｢女だぞ？そんなことする必要なんてないだろ。それに、、｣
｢おいおい、こんなに服装も何もかも違えば怪しいだろ｣
｢そうだぞ！いくらいい女でも油断するんじゃねぇ｣
Aが目を覚ますとそこには広い天井が続いていた。
あまりにも見たことのない景色。
それに、知らない男たちに囲まれている。
Aは思わず上半身を勢いよく起き上がらせた。
｢起きたぞ！捕まえろ！｣
｢誰か！縄はないのか！？｣
｢おい！早くしろ！｣
Aが初めて自分に向けられる乱雑な言葉の数々に混乱していると、
｢おいおい。誰か誰かってお前ら本当に軍人になる気はあんのか？｣
少し困ったように、でも愛想良く笑う人物。
Aもよく知る人間であった。
｢きくた、さん｣
思わず声に出して呟いてしまう。
白米の盛られた茶碗を持ちながら頭を掻いてできた彼に向かって、男たちは即座に話しかける。
｢菊田軍曹殿！！この女どうしましょう？身につけているもの全てが見たことないものです！危険では？｣
菊｢おい、ちょっと待て。嬢ちゃん、今俺の名前を呼んだかい？｣
菊田は警戒したような顔を見せているがその声にはやはりどこか優しさがあった。
｢呼びました！｣
思わず菊田を見つめると
｢ちょっと2人で話そうか？｣
そう言いながら菊田は少し面白そうに微笑んで、扉に親指を向けると着いてくるように促した。
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作者名：百 | 作成日時：2024年1月24日 0時
