【wrwrd!】あの子愛しの吸血鬼【短編集】 (ページ9)

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【zm】An evil mutant VS The human race ページ9

怖かった。

わたしはずっと、自分自身が怖かった。

「なあ、これって結局何なん？」

これ、と彼が摘み上げたピルケースを見て、小さくため息を吐く。

「…知ってるでしょ。『血液錠剤』だってば」

「いやそれは知っとるけどー」

思わず厳しい言い方になってしまったが、当の本人は全く気にしていないようで少し安心する。

幼馴染のゾムはいわゆる鍵っ子で、小学生の頃から放課後はもっぱらわたしの家に入り浸っている。(本人曰く、「暇なんよ」)

その習慣は高校生となった今でも途切れることはなく、この男は今日もこうしてわたしの部屋に我が物顔で侵入していた。

見られて困るものも今更ないし、それはもうどうでもいいのだがいかんせん最近のゾムは少しおかしい。

彼が目を細める。

ぎらぎらと強まる眼光が、わたしの肌の上を這った気がした。

彼は最近、少し妙なのだ。

「これ飲んだら、それで満足なん？」

妙に『わたし』を、煽ってくるのである。

「なあ、教えてよ」

『吸血鬼』の、わたしを。