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あまりに無責任な一言は、ちょっとした戦争に発展した。
無駄な口喧嘩の中で得た情報をまとめて、わたしは一人頭を抱えた。
これ、ほんとにわたしのせいじゃん。
ここでもう一度言わせてもらおう。
わたしはいわゆる吸血鬼だ。
栄養源に、人間の血を求める生き物だ。
(わたしは純血ではないから、貧血気味な時に人間側の協力者から提供される血を少量摂取するのみだ。秘匿の存在というわりに、実情は案外平穏なものである)
わたしに流れる血の中に、微量ながら確かに人間の血を求める、本能を駆り立てるような作用があるらしく。
その本能に呼応して、人間の血も騒ぐのだという。
「吸血鬼に好かれるために、一番効率のいい方法」、とやらを探して。
時にそれを実践してみせて。
そうして勝手な本能に踊らされた結果が、鼻血、なのだと。
このくだらない事実を、もう鼻で笑うことも叶わなかった。
笑い飛ばすには、少し、心当たりが多すぎた。
けれど、まだそのときは希望があった。
彼らの血を見ても、わたしがそれを欲したことは一度もなかったのである。
そう、そのときまでは。
その細い蜘蛛の糸が無慈悲に切れたのは、仲の良い友人の、トントンに教室に呼び出されたときだった。
これが告白だと、つう、と流れた赤い液体で察した。
いつもなら、またか、とどこか冷えた感情が胸を突いていた。
でも、今回は違った。
その赤い液体をどこかぼんやり見つめる彼に、ぞわ、と背筋を何かが駆ける。
ゆっくり鼻に伸ばされるその筋肉質な腕が、浮かぶ太めの血管が、わたしの目を、焼く。
「ご、ごめんなさい!」
自分の中の危険思想に気づいたとき、思わずその場から逃げ出していた。
それ、Aのせいよ。
いつかの母の言葉がわたしを責め立てる。
彼が、彼らが、血を流すのはわたしのせいなのだ。
わたしの、ためなのだ。
家で、何度も彼の姿を思い浮かべて、考えあぐねて、そして、決めた。
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作者名:越生 | 作成日時:2017年12月21日 23時