【wrwrd!】あの子愛しの吸血鬼【短編集】 (ページ15)

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「…んっ、ま、待って。…っ待って」

「嫌」

肉食獣はそれから何度も、わたしの肩口を暴いた。

乱れた服から覗く下着なんかより知らず知らずのうちに漏れる鼻にかかった甘い声が、自分の口から零れているのだという事実が羞恥心を煽った。

これは、彼にとってはただの『食事』なのに。

唇を強く噛み締めてでも、そうして無理に声を我慢してでも、こんな劣情を抱いていることを、決して彼に悟られてはならない。

もし、もしそんなことが悟られてしまえば_____

「…A？」

彼の都合の良い『食事』で、いられなくなってしまう。

「っ、は！なんでも、ないよ」

上がった息を整えながら、不思議そうにわたしを呼ぶ彼に応える。

今日、もう終わり？やだ、やだ、まだ全然足りない。

わたしのことなんて気にしなくていいから、もっと、

もっと、食べてよ。

「声我慢すんな。血、出とる」

噛み締めすぎた唇を、彼の舌先がなぞる。

口付けに似たその行為に、また腹の奥でろくでもない感情が騒ぎ始めたのが分かった。