【wrwrd!】あの子愛しの吸血鬼【短編集】 (ページ14)

今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:39,597 hit

＊ページ14

その笑いは、いっそ嘲笑だったかもしれない。

なんにせよ、彼がこんなに笑えない冗談を口にするのは珍しくて、おかしくて。

走った沈黙の中、必死に笑いをこらえてその冗談の続きを待った。

小刻みに震えるわたしに、その大きな目が不満げに歪む。

「…信じてないやろ」

「だ、だって」

もう堪えられなくなって声を上げた。

相も変わらず不満げな目は、その冗談を撤回する気はないらしい。

笑っちゃだめだったかな。

吸血鬼というのは、何かの暗喩なのかもしれない。

ああ、それなら悪いことをした。

本格的に怒らせてしまう前に、早いところ彼に謝らなくては_____

「なら、」

「え？」

「そんなに信じられんなら、試す？」

彼が小さなローテーブルを軽く跨いで、わたしとの距離を詰める。

そのままわたしの肩を掴んだ大きな手に、ぐ、と力が込められたのが分かった。

「…嫌なら、抵抗してな」

そう耳元で囁く声が不安そうに揺らいでいたから、妙に切なくなってしまってただ彼に肩口を暴かれるのを待った。

彼の笑った時に覗く愛らしい八重歯が、そのときばかりは肉食獣の牙に見えた。