甘い時間を先生に。

進みたい、進めない ページ7

.




茜「次の選択授業、Aは製菓だったよね？」




「うん、茜は千賀くんと同じでダンスだよね。」




「そうなんだけどさー、けっこう先生も健永もスパルタでしんどいんだよぉ〜。」




はぁあ、と大げさにため息つきながら言う。



でも、言葉とは裏腹に顔はすっごく嬉しそう。


苦手なダンスも選択しちゃうほど千賀くんと一緒にいたいんだよね。




茜「おいしーの作ったらちょうだいね？」




「ハイハイ、あげる人もいないし茜にあげるよ。」




やったーって小さくガッツポーズをしてた茜が、ふと真面目な顔をした。



茜「…Aかわいいんだからさ、もう先輩のことなんか忘れて…新しい恋しようよ。」




「………授業、遅れるよ。」




茜「A…。」




わかってる。

もう2年も前のことだし、いつまで引きずってるんだろうって自分でも思う。


私だって前に進みたい。


だけど、それ以上に怖いよ。


好きになった人にまた捨てられたら…。




「茜ごめん……まだ…。」




それだけ言って俯いていると、困ったように笑った茜に頭をポンポン優しく撫でられた。





茜「あたし、いつでも力になるからね。だから、おいしいお菓子よろしくね。」




「…うん。」



ちょっとおどけて舌を出す茜につられて笑う。




ごめんね、茜。

心配してくれてありがとう。

家庭科室に現る→←ごちそうさま

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す