第九十九幕 ページ5
「この後よろしいかしら？」
案の定、ベラは私に話しかけて来た。
冷や汗が首筋に垂れる。
彼女に着いて行くと、少し人から離れた場所までやって来た。
それまで無言だったベラは、突然大きな溜息を吐く。
「人の物を借りるなら、本人に許可を取るのが道理ではなくて？」
彼女は目薬を取り出すと、それを手のひらでクルクルと回す。
なんのことだ、とは言わせないつもりらしい。
『すいません…つい』
折角役者になったばかりなのに、すぐに降ろされてしまうだろうか。
「私の話を聞いてまして？
別に構いませんわ。私や貴方の他にも何人か使っているもの。
これは差し上げますわ」
ベラは、手に持っていた目薬を私に手渡した。
そのまま、特に何も言わずに楽屋へと戻ってしまったのだ。
私はそれを反射的にポケットの中に隠す。
楽屋に戻ると、ロナードが丁度帰り支度をしている所だった。
彼は私を見つけると、軽く走り寄って来る。
「一緒に帰らない？
僕、今日はこれで終わりだから」
こうやって彼と話せるのが、なんだかとても嬉しい。
私は舞台衣装を着替えると、彼と共に劇場を出た。
まだ時間は昼間。
心地良い日差しが道を照らしていた。
「…大丈夫？
顔色悪いよ」
しばらく歩いたその時、ロナードは私の顔を覗き込んでくる。
突然の事にびっくりしたが、私は慌てて顔を逸らした。
ベラドンナのせいか。
先程まではメイクをしていたお陰で隠し通せていたが…
『疲れたのかもしれないです…ね。
今日は家で休もうかと思います』
この花は、猛烈な高揚感を引き起こす。
何度も使用している内に慣れて抑えられる様になったが、下手に人といるとボロが出るかもしれない。
だが、もう既に手遅れだったのかもしれない。
口を開こうとする度に、口角が気持ち悪いほど上に上がっていく。
そして、思考が何度か飛び始めていた。
「大丈夫じゃなさそうだね。
…家まで送って行くよ」
彼は私の肩に手を回した。
まずい。そろそろ限界だ。
『あ、ありが、ありがとうご、』
どうしよう。呂律が回らない。
目の前におかしな幻覚が見えて、足取りが酷くふらついた。
それでも、ロナードの支えのお陰でなんとか家まで耐える事ができた。
「本当に大丈夫？
医者に行ったほうが…」
そう言うロナードを阻むように、私は家の中へ駆け込んだ。
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海猫珈琲(プロフ) - お茶飲み隊・茶柱さん» 嬉しいコメント本当にありがとうございます！中々更新が遅れていますが、しっかり完結できるように頑張ります！ (1月21日 16時) (
レス) id: 2d7b04296e (このIDを非表示/違反報告)
お茶飲み隊・茶柱(プロフ) - 第五人格の小説の中でもダントツで読みやすく、ストーリーの構成が綺麗だと思いました…！！こんなに好きだと思えた作品あまり無いので出会えて嬉しいです！！更新、のんびり待っています (12月13日 17時) (レス) id: 97cc3b8ecb (このIDを非表示/違反報告)
3人の隊長と座長の剣士@自由浮上自由返信(プロフ) - 海猫珈琲さん» 無理をしない程度に楽しんでくださいね!こちらこそありがとうございます! (6月7日 8時) (レス) id: 7a2b30f834 (このIDを非表示/違反報告)
海猫珈琲(プロフ) - 3人の隊長と座長の剣士@自由浮上自由返信さん» お久しぶりです！長らくお待たせしました。これからは更新頻度どんどん上げていきますね！コメントありがとうございます。 (6月7日 8時) (レス) id: b2ab9dc6ab (このIDを非表示/違反報告)
3人の隊長と座長の剣士@自由浮上自由返信(プロフ) - お久しぶりです!久々の更新､大変嬉しいです!いやぁ今後の展開がすごく楽しみです! (6月7日 6時) (レス) id: 6196f83925 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海猫珈琲 | 作成日時：2023年1月28日 11時
