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「じゃあ…そのメモを書いたあとすぐに?」
「ええ。
まるでそれが使命だったように、また意識が…」
看護師の言葉に、そっかと私は肩を落とした。
痛み刺激にも反応はあるため、また近いうちに目が覚めるはずだった。
わずかだが血色の戻りつつある頬の傷が痛々しい。
まだほのかに赤いまぶたは、おそらく脳に少なからず負荷がかかった証拠で。
「………起きて、A」
みんな、待ちくたびれちゃったよ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(藍沢)
Aを白石に任せて、まだ慎一くんについているフェローたちに歩み寄る。
「……どうだ」
そのひと言に一斉に振り返ったところを見ると、どうやら俺が来たことにも気がついていなかったようだ。
「…安定しています」
名取の言葉を最後に、何ともぎこちない空気が漂う。
いつもこういうときは隣にAがいてくれて、そのたびにこういった空気を取り払う話題を投げかけてくれたのだが、今日は違う。
「………良くやった」
振り返った彼らの顔には、ありありと、意外だ、という文字が見えた。
「灰谷は慎一くんの痛みの原因を注意深く観察した。
だから異変に迅速な対応ができた。
横峯のレボアの発想は、香坂の意思を的確に汲み取り、患者が助かる可能性を見出した。
名取にはカットダウンのスキルがあった。
レボアの挿入に成功し、俺達が来るまで、命を繋ぐことができた」
これは、救命の、彼らの大きな一歩だ。
「お前達は全員、動脈塞栓ひとつ満足にできない半人前だ。
…たが3人揃うことで、12歳の子どもの命を救った」
俯いていた彼らの顔が、ゆっくりと上がってくる。
「お前達が駄目だと言っているんじゃない。
救命はチームだと言っているんだ」
そう言い残して、俺は白石と冴島がついているAの元へ戻った。
「…今日はあの3人が頼もしく思えた。
藍沢先生や緋山先生、それにAが救命に戻ってきた頃の彼らとは大違い」
冴島の言葉に、白石もうんうんと頷きながら、Aの頬を撫でていた。
「ほんと…この子は人にすごい影響を与えてくれる。
…今日の彼ら、緋山先生とAに、見せてあげられなくて残念」
冴島が、Aの電子カルテを見つめながら、ぽつりと消えそうな声でつぶやいた。
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リラン(プロフ) - 前にも読み終わったんですけど、また読みたくなって読んじゃいました笑ところどころ私の好きな小説と似たようなセリフでてきていて、感動っていうかすごく心に響くめんがありました!改めていい作品です! (2022年7月22日 8時) (レス) @page42 id: f068be0892 (このIDを非表示/違反報告)
クリスティ38(プロフ) - もはや、オリジナルすぎてコードブルー←ではないと思いますが。一個人の感想ですので……夢主以外にオリキャラだした時点で、オリジナル多すぎな時点でもう脱線というか、名前使った別物に感じました。私が、オリジナルやオリキャラ出すの認めてない人なので…… (2019年9月23日 18時) (レス) id: eb0de2c665 (このIDを非表示/違反報告)
Mitsuki - 最近更新されていないようですが、大丈夫ですか?更新されるのを楽しみにしています。 (2017年11月10日 15時) (レス) id: 45294f18cf (このIDを非表示/違反報告)
丸メガネ - なんなんですか!明日学校なのに泣きすぎて目が腫れてしまうじゃないですか!と怒りたくなるくらい面白かったです。これも、何度目かのコメントですが、何回もコメントしたくなるほど面白いです!更新頑張ってくださいね。 (2017年9月19日 1時) (レス) id: c2c72ce877 (このIDを非表示/違反報告)
Kazsaaaan(プロフ) - 初めまして!ずっと1話から読ませていただいておりまして、今回8話のお話が涙なしでは読めなかったので気持ちを我慢できず感想を書きに来ました!もう!大好きです!過去のお話含め、切なさありキュンあり、ハラハラドキドキな毎話。更新楽しみにしています! (2017年9月11日 23時) (レス) id: 5f115adcd4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年9月5日 0時