tear. -いっそ、後悔ごと流れて- ページ2
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(香坂)
奏ちゃんの病室を出てから、私と耕作と新海先生の間に会話はない。
そう遠くない壁に、私はもたれていた。
自責の念が、ぐるぐると頭と胸の中を巡っている。
────私が、弾けなくした。
────私が、彼女の人生を殺した。
そう。
────11年前、私が両親の命を奪ったように。
そのふたつの事実が、喉元につっかえて呼吸を邪魔する。
苦しい。
胸が痛い。
「……は…っ」
「…A?」
耕作が私を呼ぶ声が、どこか遠く聞こえる。
思わず私は顔を両手で覆った。
「香坂…」
「っ…、私の、せいです…!」
涙交じりの、喘ぐような悲痛な叫びだった。
────ごめんなさい。
新海先生の否定の言葉も、耕作の視線も、分かっていたけれど、私は顔を上げることが出来なかった。
「…A、深呼吸しろ。
────心臓に負担がかかる」
「…は、……っく」
ばくばくと音を立てている心臓は、幸い痛みを発していない。
けれどそれは、耕作の優しさだった。
私の背に手をやりながらさすっている彼に、新海先生がそっと尋ねる。
「なぁ、藍沢。
…香坂は…」
「…あぁ。
だが、お前には関係ない」
突き放すようなその言葉に、落ち着きを取り戻し始めていた私は、慌てて新海先生に目線を向ける。
「ちょっ、そんな言い方だめ…!
ごめんなさい…いずれ、ちゃんとお話します」
ぺこり、と申し訳なく頭を下げれば、そこに優しく触れる手の感触があって。
そろり、と視線を首ごと上げると、半ば睨むような目つきで新海先生を見る耕作の姿が。
「…おい」
「んな怒るなよ。
そんな顔して謝られると、追求しようにも出来ねぇや」
いつものように笑った彼は、でもと急に真剣にな顔つきで私を見つめる。
「────無茶するようなら、許さねぇからな」
「…は、はい」
────先生のこと、初めて怖いって思ったかも…。
じゃ、姫を頼むわと言って去っていった新海先生をぽかんと見つめていると、するりと背中にあった大きなぬくもりが離れていく。
「…耕作」
「お前が気に病む必要は無い」
やめてよ、自分ひとりで責任負わないで。
そう言いたかったのに、喉は声を紡いでくれなかった。
それは、互いを思いすぎるが故の、結果なのだと。
あぁ、いつも、この感情が邪魔をする────。
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yui - いつも楽しく読ませていただいております!単語についてなのですが、6話の5ページ、「コークリフト」とあ(ますが「フォークリフト」かと思われます。倉庫内で重いものや大きいものを移動させる乗り物です。 (2017年10月13日 16時) (レス) id: 30abdae40f (このIDを非表示/違反報告)
Alice(プロフ) - 18の守口さんの名前が森口さんになってましたので報告させていただきました (2017年10月7日 13時) (レス) id: 1a1e66043f (このIDを非表示/違反報告)
kii - 仕事の話し(患者さんとか)でもいいし、プライベートでもいいし、シリアスな感じでもいいし…とにかく香坂先生と白石先生が会話をしているところをもっと見たいです(笑)突然のお願いですみません!これからも頑張ってください!応援しています! (2017年8月28日 23時) (レス) id: 827d9f9495 (このIDを非表示/違反報告)
kii - 6話完結おめでとうございます!いつも楽しい作品を作ってくださりありがとうございます!またまたリクエストなのですが、最近藍沢先生との絡みが多いので(不満とかそういう意味じゃないです!)白石先生との2人のシーンが欲しいです!できれば藍沢先生の恋愛話は無しで… (2017年8月28日 23時) (レス) id: 827d9f9495 (このIDを非表示/違反報告)
nee - こんばんは!いつも作品見させてもらってます!リクエスト?意見?なのかわかりませんが名取先生には香坂先生から緋山先生に恋心移ってほしくないっていうか……無理なこと言ってすみません!これからも頑張ってください! (2017年8月28日 22時) (レス) id: 363a4b4fa6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月22日 0時