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(藍沢)

少し頑張りすぎたみたい、と白石が苦笑していた。



仮眠室の前で、彼女から譲り受けたシュークリームを片手に立つ。



────ほら、お疲れ様って言ってきて。



おつかいに行ってきて、くらいの軽い言葉で放り出された俺は、軽く息を吐いた。



────簡単に言ってくれる…。



あの日の夜、どうやら白石と緋山と大山は俺があいつに告白でもしたと思っているらしい。



そんなわけあるか。



伝えたい気持ちは、ふたりを阻む障壁さえなければ、とっくに伝えている。



それこそ、7年前でも言えていたのではないだろうか。



さて、こんなところで突っ立っているわけにもいかないので、一応三度ノックをする。



返事はない。



────…寝ているのか?



そっとドアを開くと、薄暗い仮眠室のベッドの下段はもぬけの殻だった。



電気をつけてシュークリームをベッドに近いテーブルに置こうと、歩みを進める。



その上に────口が空いたままのミネラルウォーターと、小さな白い筒状のドラッグケースが置いてあった。



Aのものだろうか。



何錠かこぼれたそれが何の薬なのか────そこまで特定できるほど、情報は多くない。



心臓、苦しそうなあの表情からわかるのは────痛み。



────不整脈…?



それなら別に隠すこともないはずだ。



────なら、なぜ病気を隠そうとする?



自分自身に問いかければ、その答えは返ってきた。



認めたくないと、脳が否定している。



待つと約束した。



だから────無理には聞かない。



どれだけ怒鳴っても、あいつは口を開かないだろう。



けれど、どうしても、脳は聞けと促すのだ。



────それが、命に関わるものだからと。



どうすればいい?



この関係を壊す怯えがある。



怖い?



もし、明日から彼女が顔を向けてくれなかったら?



もし、話しかけても何も答えてくれなかったら?



せっかく戻ってきてくれたのに?



「………俺は……」



────どうすればいい…?



「……A」



────もし、もう二度と手の届かない存在となってしまったら?



たとえ、その答えがどんなものであったとしても。



────ねぇ、あなたも医者になるの?



医者は、命を優先する。



それがあいつへの気持ちの表れなのかは、まだ気づかないふりをして。

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作品ジャンル:恋愛
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あやみん - 名取先生が、自分に、恋したなんて、最高です!!!!! (2019年8月19日 12時) (レス) id: ac50c68a33 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 16話、朝日は登りつつではなく朝日は昇りつつ、ではないでしょうか? (2019年2月10日 15時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 14話、以外にも耕作だった。ではなく、意外にも耕作だった。ではないですか? (2019年2月2日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 13話冒頭、横峯さんではなく横峯ではないですか?意図されてでしたらすいません (2019年1月18日 22時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
rabbit - 32の下から9行目「手術中にに」となっています。間違っていたらごめんなさい。 (2018年10月6日 23時) (レス) id: fec1ec90ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月1日 0時

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