16 ページ18
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(香坂)
自分で言うのもあれだけど、私の体内時計は正確だったりする。
ばっちりいつもの時間に目が覚めてしまって、思わず苦笑したものだ。
「朝の検診で異常なかったら復活、かな」
スタッフステーションの裏にあるHCUは、皆の目に止まりやすい。
コンタクトなしでは何も見えないので、眼鏡を装着したのち、はためくパーカーの袖を抑えつつ、点滴とともに私はそっと迅速にHCUを出た。
眠っている緒方さんを横目に見ながら。
当直の医師が何人か見られる中、早歩きで向かったのはICU────冴島さんの元。
そばには、隈を作った藤川先生がうつらうつらとしながら椅子に座っている。
途中、医局に寄って持ってきていた自分のタオルケットを、起こさないようにその肩にかけてやる。
それから、眠っているような穏やかな顔の冴島さんを見つめて、その手に触れた。
────すこし、あたたかい。
「…藤川先生がついてるなら、お腹の子も大丈夫だよね」
何もできない自分が、ひどく歯がゆかった。
朝日は、登りつつあった。
家に帰れていないので朝食なんて作れるはずも買えるはずもなく、病院食を頂こうかと決意を決めかけていたところ、売店で恵ちゃんがおにぎりとお茶を買ってきてくれた。
「昆布で良かったっけ?」
「ああ、ありがとうございます…!」
お恵み…!と有難く朝食を頂いた後、耕作がやって来て心音、瞳孔、脳梗塞の疑いがないかを調べて、腕の点滴が抜かれた。
「自由に動いて構わないが、過度な負荷はかけるな」
「…わかってるよ、大丈夫」
針が刺さっていたところにガーゼパッドをはりながら、彼はため息をついた。
「…お前の大丈夫は信頼するなと、黒田先生達から言われている」
「えぇ…」
そのあとはダッシュでシャワールームに着替えと借りたパーカーを持っていき、15分でシャワーを済ませてユニフォームに袖を通す。
パーカーは綺麗にたたんでロッカーの中の自分の鞄に入れる。
────洗濯して返す、なんて言ったら断られるからなぁ。
これくらいのお礼はさせてほしい。
まだ髪は少し湿っているが、まとめておけば大丈夫だ。
手早く三つ編みからのお団子を作って、最低限の化粧を済ませる────時間にして約5分。
「よしっ」
遅れはきちっと取り戻す。
それが私のモットーだ。
3744人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あやみん - 名取先生が、自分に、恋したなんて、最高です!!!!! (2019年8月19日 12時) (レス) id: ac50c68a33 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 16話、朝日は登りつつではなく朝日は昇りつつ、ではないでしょうか? (2019年2月10日 15時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 14話、以外にも耕作だった。ではなく、意外にも耕作だった。ではないですか? (2019年2月2日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 13話冒頭、横峯さんではなく横峯ではないですか?意図されてでしたらすいません (2019年1月18日 22時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
rabbit - 32の下から9行目「手術中にに」となっています。間違っていたらごめんなさい。 (2018年10月6日 23時) (レス) id: fec1ec90ab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月1日 0時