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「短い時間で確実にドレナージするのに最適な大きさだ」
「…はい」
あ、まって、いいこと言ってるけど横峯さん気づいてない…!
「それに、4歳の子を優先した搬送プランも良かった」
横峯さんが、え?という顔で私を見てる。
大丈夫、私も少し混乱中。
「────よくやった」
「………え?」
そっと恵ちゃんのそばに寄って、お互い笑い合った。
よかったね、横峯先生。
それからスタッフステーションに戻って恵ちゃんとで書類を整理していると、耕作が戻ってくる。
あ……まだこの二人喧嘩してるんだった。
「…お疲れさま、藍沢先生」
「ああ」
私が声をかけたきり、しん、と静まり返る。
キーボードを打つ音だけが、やけに大きく聞こえる。
────気まずい…猛烈に、気まずい…。
お願いだから私を挟んで剣呑な空気出さないで…!
冷や汗ダラダラである。
「────思い出した」
「今度はなんだ」
────耕作!喧嘩腰やめなさい!
「愛情がないわけじゃないのよ。
あなたもフェローを育てようとしてる」
もしかして恵ちゃん、わかってくれ、た…?
「まぁ、そのやり方が正しいとは思わないけどね。
どんなに正しいことでも、言い方を間違えれば相手を傷つけるんだからね」
うーん、正論。
なんか、後半は恋人の友人に言ってるみたいに聞こえるのは私だけかな…。
「あと、もうひとつ。
…A」
「ん、なに?」
「横峯先生がね、香坂先生も褒めてくれたんですって言ってたよ」
────胸腔ドレーンずっと練習してたからねぇ。
努力の賜物というか、私にもああいう時期あったなぁと昔を思い出したものだ。
「…黒田先生に「よくやった」って言われてた頃が懐かしいなぁ。
信頼できる上司からのよくやったって、フェローにとっては魔法の言葉だよね」
あの頃はまだ情緒不安定だった私を、黒田先生はその一言で変えてしまった。
「藍沢先生、そういうこと。
じゃあA、先に行ってるね」
「はーい。
もう少し遅れるから、食べててもらって大丈夫だよ」
今日は久しぶりに美帆ちゃんも含めて、3人でディナーという名の女子会だ。
ふたり分のキーボードを叩く音が、暫くスタッフステーションに響いていた。
ちらり、と向かいの部屋にいる横峯さんを覗く。
────親の心子知らずということわざがある。
確かにそうだ。
子どもだって、親の気持ちはわからない。
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彩架(プロフ) - 3話の「始め」ではなく「初め」ではないですか? (2018年10月13日 23時) (レス) id: d02e226a01 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 話に話を咲かせる、ではなく、話に花を咲かせる、ではありませんか? -14cm-です (2018年9月28日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - すいません、先程の書き込み、訂正させてください。「ステンド」ではなく、「ステント」ではありませんか? (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生の考えてること、何個目かはわかりませんが…、「それは」の後の「、」が「,」になってます (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生が一番最初に考えてること、ステントグラフトになっています。ステンド、ではないです? (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年7月27日 12時