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「ペアンの先で胸膜を破って。
それで脱気できると思うよ」
『…わかりました』
少しの間を置いて、くちっと、小さな音がした。
胸膜を破った音だ。
「……どう、異常ない?」
『脱気の音が聞こえません…!』
恐らく、ヘリの中だから騒音に邪魔されて聞こえないのだろう。
「大丈夫、バック揉んでみて」
『…!
バック、軽くなりました!』
「Congratulation.脱気できてる」
あ、集中するとつい英語になっちゃう癖、なんとかしないとなぁ。
『チェストチューブ挿れます』
「肺を傷つけないように、慎重にね。
…大丈夫、ここまで来たんだから、落ち着いて」
「…はい」
「チューブが曇ったら、正しい位置に入ってるって証だから。
…どう?」
今度は、さっきよりも長い沈黙だったと思う。
『………曇った…』
小さな声だったけど、はっきり聞こえた。
────成功だ。
「────よくやったね。
あとはチューブが抜けないように注意して。
……ヘリポートで白石先生と待ってるよ」
ありがとうございました、とヘッドマイクをお返しして、ちょうど待っていた白石先生とヘリポートへ駆け出した。
藍沢先生も、彼の方も、きっと大丈夫だろう。
そんな予感がある。
女の勘、というよりかは長年の信頼に等しい。
無事に患者3人の細かい処置を片付けてから、私は点滴の袋の隣で揺れるクマの人形を、2人の娘さんのベットのそばで見ていた。
「安心して。
隣にお母さんもさやかさんもいるよ」
……そういえば、冴島さんのこんな優しそうな顔、最近滅多に見れてなかったなぁ。
やっぱり、ちょっとピリピリしてたから。
と、そこに藍沢先生がやって来た。
「換気がうまくできないくらいで、いちいち連絡してくるな。
緊張性気胸を疑ったんだろう」
「……疑いました」
「じゃあ自分でどうにかしろ」
沈黙が落ちる。
あーもう、この感じ嫌いだ…。
「まあまあ、私もちょうど手空いてたから、そんなに叱らないでよ」
「それに、ヘリの中で制限があったとはいえ、下手くそすぎだ」
無視ですかいな。
いまほんとにさらりと受け流してったよね?
あー…横峯さん沈んでる…。
ほんと、あとで鉄拳(と呼べるかは微妙だが)で制裁を落としておこ…
「だが、思い切って層を大きくとったのは正解だ」
おこう……お?
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彩架(プロフ) - 3話の「始め」ではなく「初め」ではないですか? (2018年10月13日 23時) (レス) id: d02e226a01 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 話に話を咲かせる、ではなく、話に花を咲かせる、ではありませんか? -14cm-です (2018年9月28日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - すいません、先程の書き込み、訂正させてください。「ステンド」ではなく、「ステント」ではありませんか? (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生の考えてること、何個目かはわかりませんが…、「それは」の後の「、」が「,」になってます (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生が一番最初に考えてること、ステントグラフトになっています。ステンド、ではないです? (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年7月27日 12時