タイトル ページ1
「気持ち悪い」
気持ちの悪い…骸だ。
胎児のように蹲まって、横たわる獣の、これは骸だ。
柔らかくうねる髪が、雨に濡れて顔にまとわりつく。骸の瞳に私が映る。生温く湿った視線。焦点が揺らぐ。虚像。激情。失望。
アルコールの缶。その一つが足元に転がると、あたしはそれを蹴る。
青年にそれがぶつかり、空しくまた転がる。
転がる缶がまたひとつ、缶を倒した。
私はまた缶を蹴る。
路上で吐瀉物に塗れて横たわる獣。アスファルトの濡れる匂い。獣にまたひとつ缶が当たる。
「やめろ」
痛いから、と骸は呟く。鍛え上げられた屈強な躯には、このくらい、何ともないだろうに。
希ったもの、恋願ったもの、乞い懇願ったもの。
それを唯一とした青年の、これは骸だ。
願いが…命題が解き明かされないのなら、彼に意味はないのだから。
「暁」
薄明かりを帯びた雲に覆われた空を見上げながら、獣の名を呟く。
無様な骸はゆっくりと身体を起こす。
「とんでもない寝癖」
「るせ…」
暁はシャッターに寄りかかって目を閉じる。全く…
「貴方、今日も仕事でしょう?早く家に帰って支度しなさい」
「あ?頭痛ぇんだよ」
宿酔?と訊くと青年はぶっきらぼうに頷いた。これだから酒クズは。
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作者名:みかなべ | 作成日時:2024年3月21日 18時