拾捌・二年前ーー子供好キト前職ト ページ22
《二年前、NO side》
『十四で
「A先生、子供好き?」
『まあ』
太宰の後ろに腰掛け、前の座席に凭れ乍ら話す朝霧。
『子供は何時だって可能性だよ』
「…素敵な事を云うね」
『お前は如何なんだ。六蔵少年と意気投合してたじゃないか』
「私は…判らないや」
『そうか』
太宰の曖昧な返答を掘り下げて訊く事もせず、朝霧は会話を切った。
黙って了った彼女の方を、太宰はそっと伺う。
鼻筋の通った何処と無く秀麗な顔立ちと云い、癖がかった蓬髪と云い、鏡を見ていると錯覚しそうな程、彼女は太宰に似ていた。
但、此れ又良く似た鳶色をした、その瞳はーー
『おい、前向け』
「はーい」
太宰は視線を戻し、再びの沈黙が下りた。
『…前職は』
「へ?」
沈黙を破った出し抜けな朝霧の問いに、心底からの腑抜けた声が太宰の口から零れた。
「…国木田君は数学教師だったらしいけど」
『違う、お前の前職』
「何で?」
『何となく』
「はあ…普通に学問を修めた後は、特に何もして無かったけど」
『へぇーっ、そうか。予想が外れた』
「どんな予想?」
『予想って程の物じゃないが。働かずにずっと遊んでたにしては、随分落ち着いてる気がしてな』
此れは拙いかも知れないと、太宰は軽い焦りを覚えた。
出逢ったばかりだと云うのに、彼女は容赦無く心の深くに仕舞っている部分を抉じ開けて来るのだ。
それを云うなら、出逢ったばかりの彼女に既視感を覚えて仕方が無い私も大分妙かも知れないけれど。
内心呟いて、太宰は又笑みを貼り付けた。
「えー? 自慢じゃ無いけど、私落ち着いてるって云われた事なんて今迄一度も無いよ? 先生こそ、此の状況で平然としてるなんて、結構豪胆だよね」
『そうか? まぁ佳いや、今のは忘れてくれ。…未だ二十歳の癖に、偶に浮世の闇の底深くを覗いて来ちまった様な顔をするよなァ何て、ふと思っただけさ。気の所為だったら佳いんだ』
「…そう」
『それより気になるのは蒼王の話、あと集団失踪事件だ。…私なんかが首を突っ込んで佳いのか判らないが』
「その辺の許可は国木田君に貰えば?」
『今、聞ける状況に無いだろ』
「確かに」
朝霧は隣の座席を見た。蹲って譫言を呟く国木田を。因みに助手席の運転手は気絶している。
太宰の運転で、爆走とも云えない大暴れを繰り広げるタクシー内。
「油断出来ないね」
操縦桿を握る太宰の呟きは、車輪が道路に擦れる音に消えた。
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つばき先生(プロフ) - ヒスイさん» 有難うございます。頑張ります! (2016年12月23日 23時) (レス) id: c6022dbc98 (このIDを非表示/違反報告)
ヒスイ(プロフ) - 作品に参加頂きありがとうございます!とても面白かったです♪♪続き気になります!!応援してます♪☆10評価しました!! (2016年12月23日 21時) (レス) id: a217f5439d (このIDを非表示/違反報告)
つばき先生(プロフ) - いちごどーなつさん» ありがとうございます。見ての通りの展開の遅さなので、何処まで行けるかは不安ですが…頑張っていきたいと思います! (2016年12月15日 20時) (レス) id: c6022dbc98 (このIDを非表示/違反報告)
いちごどーなつ(プロフ) - 私もきっと生徒達と同じ反応しますw 続きが気になります! 更新楽しみにしてます(*´∀`)♪ (2016年12月15日 16時) (レス) id: f60c6d1c16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つばき先生 | 作成日時:2016年12月13日 15時