ドラマチックな出会いは ページ29
「びっくりしたわ、ジョージ」
その座席にはニヤニヤと嬉しそうな双子と、呆れ顔のアンジェリーナ・ジョンソンが座っていた。
「私も驚いたわよ。いきなりジョージがドアを開けたと思ったら、学園のマドンナが現れた」
アンジェリーナが苦笑いしながら握手を求めてきたので、Aはその手を両手で包み込んだ。
「間違ってはいないけれど褒めすぎだわ」
アンジェリーナの隣に座りながら、Aは照れる素振りも見せずに言った。
「いーや。それがあながち言いすぎでもないんだぜ」
フレッドがチラリとコンパートメントの外を見やる。その視線につられてそちらを向くと、何人かの女子生徒が固まってAをじっと見つめていた。Aがそちらを向いた瞬間、黄色い悲鳴と共に彼女たちは走り去った。
「さっきから女の子たちは皆あんな感じなの」
Aは肩をすくめ、少し寂しそうに言った。話しかけたくても、目が合うだけでどこかへ行ってしまう。
「問題児の英雄ハリー・ポッターにも、わがままお坊ちゃんドラコ・マルフォイにも、俺らのような平民にも、Aお嬢様は分け隔てなくお声をかけてくださる」
「由緒正しい純血のお家生まれっていうのも相まって、俺たちのお嬢は今や“A様”だ。かく言う俺たちの妹もなんだけど」
ジョージが親指で示した先では、赤毛の柔らかそうな髪を持つ少女が棒立ちになっていた。
「ウィーズリー兄妹の紅一点、ジニーさ。Aの話を聞いて今やメロメロなんだ」
ジニーと呼ばれた少女に軽くジョージが手招きが、彼女は両手と首をブンブン振って後ずさった。
「とんだ初恋泥棒ね。
ところで私、あなたたちがなんでAに懐いているのか知らないわ。気づいたら“お嬢”“お嬢”ってストーカーみたいに」
「おい、人聞きの悪いこと言うな」
「あれは映画のワンシーンのような、ロマンチックな出来事だったな……」
「虹がかかってたわね」
Aは、うっとりと目を細めて見つめ合う双子に悪戯っぽく返す。ジョージとフレッドは交互に彼女との出会いについて語り始めた。
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作者名：クラゲなお嬢 | 作成日時：2020年11月7日 17時
