あの夜と同じ色 ページ38
◇
「あれ? 伊地知くん?」
回らない寿司屋を出ると、見慣れた黒光りが路肩に止まっていた。
私と五条くんは顔を見合わせる。
「伊地知くん、呼んだのって五条くん?」
「いや、僕じゃない。ほんとだからね。ていうか、Aが呼んだんじゃないの?」
じゃあ、まさか。
私と五条くんの視線は、後ろを歩いていた三人に移る。
「それじゃあ、俺たち明日早いんで」
「伊地知さんを呼んだのは私たちよ。だから送っていかなくて大丈夫」
「五条先生! 頑張って!!!!」
恵くんと野薔薇ちゃんの言葉に納得した。なるほど、そういうことか。五条くんがまたパシリにしようとしてたのかって思ってしまった。
…悠仁くんの「頑張って」はよくわからないけど。
五条くんはと言うと、少しだけ目を見開いて、それから「僕の教え子は優秀だね〜」なんて笑った。
確かにそうだ。でも、五条くんが送ってくれるとは思わなかったのかな。瞬間移動できるし。
「それじゃあ伊地知〜! 任せたよ〜!!」
教え子三人を乗せた車が、走り去っていく。私たちも乗せてほしかったな、と一瞬思った。
でも、高校生三人に大人二人がいると狭いか。そりゃそうだ。
「じゃあさじゃあさ、ちょっと僕行きたいところがまだあるから! ちょっと着いてきてもらっていい?」
「そうなの? まあ…いいけど」
ほんとに? やったー。と笑う五条くんに手を取られる。
手を取られる? なんで?
そう思った時には、景色が変わっていた。
───今朝も見た、五条くんの部屋だ。正しく言えば、五条くんの家のベランダだ。夏の夜特有の生ぬるい風が吹いていた。
「到着〜」
「…やっぱり、野薔薇ちゃんたちも一緒に、これで送ってあげればよかったのに」
「えー。大人数は大変だもん」
無理無理。僕最強だけどさ。お決まりのセリフはこんなときでもくっついてくる。
五条くんらしいと言うか、なんと言うか。
「それでね、僕ずっと話したい事があったんだ」
「…そうなんだ」
五月雨さんの話だろうか。
私的には、五条家ほどの家が婚約者を取らないなんて思えない。
五条くんのお父さん、前当主様が恋愛結婚だという話は有名だけど、さすがに、幼少の頃は婚約者がいたと聞いた。両親が恋愛結婚だとは言え、婚約者がいないなんてそんなことはあり得ないはず。
「あれはね、本当のことだよ」
僕好きな人と結婚したいタイプだからさ。五条くんは私の目を見て、言う。
だから信じてほしいんだ、なんて私に言う必要はないだろう。
「もう一回、術師辞めようとか思ってない?」
◇
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まいとりー。(プロフ) - 紅葉夕さん» 紅葉夕さん、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉ありがとうございます! すごく嬉しいです。楽しんでいただけてよかったです!! 文字書き同士、一緒に頑張っていきましょう!! (2022年8月26日 21時) (レス) @page40 id: cfb5124360 (このIDを非表示/違反報告)
まいとりー。(プロフ) - マリオットさん» コメントありがとうございます〜!この作品に貴重なお時間を使っていただけて本当に光栄です…。恋愛は書き慣れていないので私自身不安なんですけど、ぜひ楽しんでいただけるように頑張らせていただきます!! 応援、本当にありがとうございます! (2022年8月6日 19時) (レス) id: cfb5124360 (このIDを非表示/違反報告)
マリオット - 面白過ぎて…感動です… 応援してます‼ (2022年8月6日 16時) (レス) @page5 id: 4a1e7dbbbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぐちや | 作成日時:2022年8月5日 7時