常夜灯ブルース ページ28
◇
薬品の匂いがした。重い瞼を開ければ、茶色の長い髪が揺れていた。
「…しょおこ、ちゃん」
「…A?」
おそい、遅いよA。硝子ちゃんの声がくぐもっている。泣かないでほしいなあ。
「五条、毎日アンタのお見舞い来てたよ。今は任務だからいないけど、任務以外の時はずっとここにいた」
「…そう、なんだ」
「ちゃんと会ってあげなよ」
硝子ちゃんはそう言って、ベッド横のパイプ椅子に腰かけた。
瞬間、小さな音を立てて医務室の扉が開いた。
「ただいま〜、戻ってきた…よ………、」
疲れているからなのか、あの真っ黒のアイマスクではなく高専時代に付けていたものと似たサングラスをかけていた五条くんが、医務室の扉の前で立ち往生。大丈夫かな。
「…じゃ、私は安置所行ってくる」
フリーズした五条くん(サングラスver)と起きたてほやほやの私を置いて、硝子ちゃんは医務室を出て行った。ちょっと待ってよ五条くんどうにかして。
「…ご、五条くん?」
「生きてる?」
「え? い、生きてるよ」
五条くんはサングラスをぽいっと放り捨てて、なんでも見透かすあの蒼い目で、確かめるように私を見ていた。
「よ、かったぁ…。死んじゃったら、どうしようって、思って、」
初めて、見た。
五条くんが泣いているところなんて。
驚きで動けなくなったのは私の方だ。
消えてしまいそうと思ったのも私の方だ。
五条くんこそ、いつか消えちゃいそうだ。
昔、傑くんと同じことを話した。
「無事で、よかった………!」
───五条、くんだ。五条くんが、いる。
私が五条くんに、目が覚めて初めてかけた言葉は、たったそれだけだった。
◇
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まいとりー。(プロフ) - 紅葉夕さん» 紅葉夕さん、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉ありがとうございます! すごく嬉しいです。楽しんでいただけてよかったです!! 文字書き同士、一緒に頑張っていきましょう!! (2022年8月26日 21時) (レス) @page40 id: cfb5124360 (このIDを非表示/違反報告)
まいとりー。(プロフ) - マリオットさん» コメントありがとうございます〜!この作品に貴重なお時間を使っていただけて本当に光栄です…。恋愛は書き慣れていないので私自身不安なんですけど、ぜひ楽しんでいただけるように頑張らせていただきます!! 応援、本当にありがとうございます! (2022年8月6日 19時) (レス) id: cfb5124360 (このIDを非表示/違反報告)
マリオット - 面白過ぎて…感動です… 応援してます‼ (2022年8月6日 16時) (レス) @page5 id: 4a1e7dbbbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぐちや | 作成日時:2022年8月5日 7時