夜がきみを覆い隠した ページ26
◇
「ッA!! 月白!!」
まだ生ぬるいAの体躯に触れる。血の気が引いた。息をしてない、どうしよう、はやく、はやく。
はやく、しょうこの、とこに。早くしないと、Aが、
「傑!! 月白を頼む!!!!」
有りっ丈の声で叫んだ。少し遠くにいた傑が、血相を変えてこちらに飛んでくる。
俺は力が抜けたAの身体を抱きかかえる。帳の外に、外に、外に!
「硝子!!!!」
「! 五条!!」
硝子は一瞬安心したような顔をして、すぐに血相を変えた。
なんせ、Aは死にかけなのだ。
「なあ、硝子、」
「うるさい…! 役立たなきゃいけないんだ…!」
Aを殺しちゃ、いけないんだ…!
涙を押し殺すように、自分自身に言い聞かせるように呟かれたその言葉に、視界がぐらりと揺れた。
もし、Aが死んじゃったら、俺はどうなるんだろう。
一回いなくなって、その時は普通の会社員になっていただけだけど、帰ってくるって可能性があったけど、でも、死んだら?
Aが二度と、帰ってこなかったら?
あんまり、考えたことがなかった。
俺は、最強だから、俺も傑も、最強だから、だから死なせない自信があったから? だから、こんなこと想定してなかった。
すぐそばにいた天雲が傑に駆け寄って、月白に反転術式を施していた。虫の息だった月白は何とか天雲の反転術式で一命を取り留めたけど。でも、Aは。
「ッ頼む…!」
Aが死ぬとか、そんなこと、言わないよね、なあ、硝子。
*
*
*
硝子の決死の反転術式によって、虫の息だとは言え息を吹き返したAを高専に連れて帰る。
医務室でまた硝子が処置に移った。…じっとしていられなかった。
「A先生は!?」
「五条!! Aさんは無事なんでしょうね!?」
「五条先生! なんとか言ったらどうなんです!」
どこからか噂を聞きつけたらしい悠仁と野薔薇、そして恵が、僕に問い質してくる。でも僕だってこの事実を受け止めきれないし、今話したら彼らを傷つけてしまいかねない。
一年ズの背後に、二年のみんなの姿も見えた。一体誰から聞いたのやら、と思ったけど、あれだけ僕や傑、硝子が焦っていたんだ。何かあったのかと思うに決まってる。
「Aは生きているよ。今は硝子が処置を行っている
ただ、いつ目が覚めるかは…わからない」
僕は、閉ざされた医務室の扉に目を向けた。死ぬなんて、言わないでほしい。また、いつもみたいに笑っていてほしい。それだけだった。
◇
312人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まいとりー。(プロフ) - 紅葉夕さん» 紅葉夕さん、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉ありがとうございます! すごく嬉しいです。楽しんでいただけてよかったです!! 文字書き同士、一緒に頑張っていきましょう!! (2022年8月26日 21時) (レス) @page40 id: cfb5124360 (このIDを非表示/違反報告)
まいとりー。(プロフ) - マリオットさん» コメントありがとうございます〜!この作品に貴重なお時間を使っていただけて本当に光栄です…。恋愛は書き慣れていないので私自身不安なんですけど、ぜひ楽しんでいただけるように頑張らせていただきます!! 応援、本当にありがとうございます! (2022年8月6日 19時) (レス) id: cfb5124360 (このIDを非表示/違反報告)
マリオット - 面白過ぎて…感動です… 応援してます‼ (2022年8月6日 16時) (レス) @page5 id: 4a1e7dbbbb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぐちや | 作成日時:2022年8月5日 7時