イグニス(EP後の話) 1 ページ4
待てども待てども待ち人は来ない。
普段きちっとした人だけにどうしたのかと何度も通話を押してみるも、無機質な女性アナウンスが聞こえるだけで。とりあえず伝言を残してきったものの、それからすでに一時間も経っていた。
その待ち人というのはイグニスだった。今日はたまの非番だということで外でケーキを食べ歩きたいといったのも彼だった。
それも毎日多忙なノクティス陛下のために自分で焼いたものをふるまいたいといたっての希望で、まったくこの人はどれだけ彼の事が好きなのだろうと思わず苦笑いすら出てしまいそうになったほどだ。
しかしどうやら今日は寝坊でもしたか、はたまた約束を忘れたのか…いやあの人の性格上それはないだろうな。きっと突然用ができて連絡もできない状況なのだろう。
仕方なく待ち合わせに指定されていた椅子から、根が張り始めていた思い尻を上げるたときだった。
「A!」
すぐに帰るのも何なので街の復興具合でも見て帰ろうと帰り道に背を向けると、息のきれたような声で名前を呼ばれる。
「すまない…連絡もせず」
振り返ると王の剣としての服ではなく、懐かしいようなスーツを着てイグニスは肩を上下させながらばつの悪そうな顔で立っていた。
何かあったのかと聞けば「突然任務がはいったんだが、スマホを部屋に忘れてきてしまった」という事だった。スマホを忘れてしまうほど慌てていた。彼を見ると確かに彼らしくもなく襟が少し乱れている。
それなら仕方ないなと笑顔を見せると彼はすこしほっとしたような笑みを浮かべる。
「まだ時間は大丈夫か…?」
今日は彼とケーキを食べるために一日開けておいたのだから首を横に振るという選択肢はなかった。
笑顔で首を縦に振ると「よかった」彼は小さくつぶやく。
朝からケーキを食べる予定だったのでおなかに何も入れてこなかった俺はすでに腹ペコ状態だったので、とりあえず近くにあるイートインがあるケーキ屋に入ることにしたのだった。
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作者名:オチャネコ | 作成日時:2019年10月22日 12時