7 ページ16
昨日は相葉堂に行ったから、だいぶ気が紛れていたけれど。
いつまでも逃げていられないことは自分が1番よくわかってる。
翌日、仕事が終わってから私は哲平の部屋を訪れた。
「連絡もなしに来るの珍しいじゃん」
そう言って屈託なく笑う哲平の横をするっと通り過ぎて、私は部屋の中を見渡すと赤いピアスを探しはじめた。
「何？なんか忘れ物？」
見つけたいような、見つけたくないような。
だけどそれはベットの枕の下という、いかにもな場所から出てきた。
「……これ」
明らかに哲平の顔色が変わる。
「あれ？なんだろ、それ」
「私知ってるよ、このピアスの持ち主」
「いや、これは……その」
「自分が何したかわかってるの」
許せないよ。
「待って！この間居酒屋でたまたま会って。お前ドタキャンばっかでずっと会えなかったし」
「私のせいなの？」
「……ごめん」
「どうしてよりによって私の会社の後輩なの？
ただの浮気なら一度くらい目をつぶったかもしれないけど。
どうしても許せない」
「ちょ……待っ……」
「別れよう」
21の時から付き合ってきて。
哲平のいいとこもダメなとこも知ってる。
大学卒業して社会人になって。
環境も変わったけど私達は変わらないって思ってた。
大好きだったのに。
「別れよう」って自分から言う日が来るなんて。
次の日は、横浜の本社でピンチヒッター的に呼ばれた仕事で。
しいちゃんと顔を合わせずに済んだ。
何も考えたくなくて黙々とパソコンに向かい機械的に手を動かす。
「お疲れさま、もう上がってもいいよ」
部長に言われて、気がつくとオフィスには私しかいなかった。
「あ……もう少しなので終わったら帰ります」
そう？悪いね？って部長はあっさり帰って行った。
しん、と静まり帰ったオフィスで、急に涙が込み上げてきた。
なにこれ。
泣きたくなんかないのに。
だけど一度壊れた涙腺はもう緩みっぱなしで。
意思とは裏腹にバカみたいにあとからあとから涙が出てくる。
誰もいないオフィスで散々泣いて、会社を出ようとしたら。
ビルの入り口でしゃがんでいたのは、見覚えのある猫背の背中。
「大野……さん？」
振り向くと、よいしょって立ち上がる。
「目、真っ赤」
「え？ああ目にゴミが」
「泣いてたんだろ」
「……泣いてない」
「あん時見えたんだ、仕事しながら一人で泣いてんの」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2706人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Haru - とても素敵な作品を読まさせていただき、ありがとうございました。reiさんの作品はよく読まさせていただいているのですが、これを機に、他の4人の作品も積極的に読んで行こうと思いました。これからも素晴らしい作品を期待しています。(Mintyさん、紫担同じですね！) (2019年8月29日 16時) (
レス) id: 7c66034540 (このIDを非表示/違反報告)
mahiru(プロフ) - でいじぃさん、Mintyさん初めまして。つむりん、レイたん、よしのさんお久しぶりです！！素敵なコラボ楽しかったです！どのお話を誰が書いているのか想像しながらわくわくと読ませていただきました〜！またコラボお待ちしております！ (2017年8月28日 22時) (レス) id: 4f10843d37 (このIDを非表示/違反報告)
ににょ - つむさん、でいじぃさん、Mintyさん、よしのさん、 reiさん、豪華コラボのこんな素敵なお話を書いてくださりありがとうございました！とても面白いく、読んででキュン＆ニヤニヤしてました（笑）また、コラボ作品見てみたいなぁと(≧∇≦)また会う日まで (2017年8月24日 18時) (レス) id: 2efc655b00 (このIDを非表示/違反報告)
梨沙(プロフ) - やっと読めたー！と喜んでおります。とても楽しうございました。またの機会をお待ち申し上げます。夏休みも終わるわー、はあぁ (2017年8月16日 15時) (レス) id: e385bf4ae4 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - 豪華コラボで楽しかったです！ こんな５人のオムニバス映画がぜひ見たい！！ (2017年8月14日 1時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：櫻ビルヂング管理人
x他4人 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年7月29日 18時
