第30話 ページ32
「最悪の事態になったら?」
「掟に従え。」
ギブスの問いにそう返すと、ジャックはウィルとそのままボートに乗り込んでいった。暗い洞窟の中を音を立てずに進んでいく。そんな中、ウィルがさっきの掟に従え、の意味を尋ねた。するとジャックが涼しげに答える。
「遅れたやつは置いてく、って事さ。」
「どうりで海賊から英雄は生まれない訳だ。」
ウィルがそう皮肉な口調で返すと、ジャックは笑みを浮かべた。
「そう言うお前も順調に海賊の道を進んでいるぜ。海賊の脱獄を手伝い、海軍の船を盗み__」
そう続けながら、ジャックはウィルの方へ目をやる。ウィルは底に沈んでいる金銀をまじまじと見つめていた。
「__おまけに、宝に目が眩んでる。」
ジャックのその言葉と共に、二人は岸に到着した。ボートから降りながら、ウィルが顔を顰めてジャックに言い返す。
「僕は宝に目が眩んでなんかない!」
ジャックは洞窟の中をこっそりと見渡せる場所まで足を運ぶと振り返り、真剣な声で答えた。
「・・・・・・全ての宝が金銀だとは限らないだろ。」
ウィルはジャックに続いて岩を登ると、洞窟の様子をそっと覗いた。すると目に入ったのは大勢の海賊達。彼らの周りには略奪品の宝が大量に置かれていた。海賊達は興奮した眼差しである一点を見つめている。それはアステカの金貨がぎっしりと詰まった石櫃。その側に立つのは悪名高い船長、バルボッサだ。そして彼のすぐ隣にいるのは__
「エリザベス!」
そう呟いてウィルは思わず飛び出しそうになるが、ジャックが嗜めた。
「待て。ここぞという時を待つんだ。」
でもこのままではエリザベスの命が危ない、そうウィルは焦って洞窟の中の方へ再び視線を戻す。と、その時。彼女の隣に立つもう一人の女性の姿に気がついた。
その女性は真っ黒のドレスを着ていて、髪も黒い。ああ、その黒髪のなんて見事な事だろう。そしてなんて黒が素晴らしく似合う女性なんだ、とウィルは思った。遠くからでもその女性の顔は整っている事ははっきり見て取れる。目を奪われてしまうほど綺麗な、黒一色に包まれた女__その瞬間、ウィルは確信した。
__あの女こそが、黒真珠の女だ。
そしてその女性には見覚えがあった。前にどこかで見かけたことがある、と必死に思い出そうとする。すると脳裏に記憶が呼び戻された。ウィルの目が大きく見開かれる。
この女性は、まさか、
「A・ブラックウッド・・・・・・!?」
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バーツ(プロフ) - 初めまして。今回の作品で改めてパイレーツ・オブ・カリビアンが好きになりました。とても素敵なお話でした。これからも主人公たちの冒険を見れることを心より願っています。 (2023年2月5日 16時) (レス) id: fdda18a68f (このIDを非表示/違反報告)
の〜ん(プロフ) - 初めまして。一昨日金曜ロードショーで映画を見て、また再熱しました!作品の方ですが、読み始めると止まらないくらいとっても面白かったです!素敵な作品に出会えてよかったなと思いました!本当にありがとうございました! (2023年1月22日 23時) (レス) id: b67a47aa93 (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - はじめまして!この素晴らしい作品に出会えたことにとても感動しました。とても面白かったです。最高!! (2022年9月12日 13時) (レス) @page36 id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
oceane(プロフ) - つじさん» 初めまして。最後まで読んでくださった上にそう言って頂けて、感謝の気持ちでいっぱいです...!こちらこそ、暖かいお言葉ありがとうございます。 (2021年9月12日 22時) (レス) id: 8c5911a62b (このIDを非表示/違反報告)
つじ(プロフ) - 初めまして、公開から何年もたった今、こうしてこの作品の小説が読めることに感動しました。とても面白かったです、本当にありがとうございました。 (2021年9月12日 3時) (レス) id: 87b029d90b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:oceane | 作成日時:2018年12月19日 21時