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「とてもお似合いです!」
試着室を出た途端、決まり文句のお世辞を揃えた店員がぐっと迫ってきた。
「ありがとうございます」
愛想笑いもほどほどに、そのままレジへ向かう。
普段身につけないドレスとヒールの高い靴に、なんだか体がむずむずする。
「これからパーティーですの?」
「ええ、普段着ないのでレンタルしようと思って」
お似合いなんだからたくさん着ればいいのに、とお世辞攻撃。
これ以上いるとお得なプランを長々説明されてしまう。手早く会計をすませ足早に立ち去った。
目下のターゲットは、「2bro」という男3人組。
なかなか尻尾を出さない手強い相手らしく、度々手練れを向かわせても返り討ちにあっているらしい。
その分、褒賞金もあがっているというわけだ。
情報屋からはそれ以上の話はもらえなかったが、今夜財閥のお偉いさん方が催すパーティーに、どうやら3人揃って顔を出すらしい。
そのためドレスなんかを着たわけで…ガセだったらとんだ無駄足だ。
裏ルートで手に入れた招待券を見せ、会場へ入る。
絵に描いたような豪邸で、女も男もきらびやかな衣装で談笑に耽っている。
「さて、どうやって探すか…」
男3人組で手練れ、しかも周りは金持ちだらけ。
どんなに人が多くとも勘で分かると思ったが、どうにも人が多く、場所も広い。
上の階から探そう、と大きな階段を登ろうとしたその時。
「ご婦人、僕にエスコートさせてくれませんか?」
長めの髪をきっちり結び、緑がかったスーツに身を纏う男に手を取られた。
「…はい?」
女好きかと思い、わかりやすく不機嫌な顔で返す。
「いやぁ後ろから見ていてね、どうにも歩きにくそうに歩いていらしたので」
確かに、靴擦れになりそうな痛みを感じていた。
「…お優しいんですね。」
反発した方が変かと思い、彼にすこし体重をかける。
今夜は3人組を見つけるのが最優先だが、そもそも自分がその筋のものだとバレないように振る舞うのも、大事な任務のひとつだ。
「いえ、僕は女性が困っているのを黙って見過ごせないタチでして…
ところで、今夜はどうしてこちらへ?」
「知人に招待されまして。ただ普段こういう場にあまり来ないので、居心地が悪くて。」
「僕もそうなんです。よかったら上のロビーでゆっくり話しませ
「おっつん、また女口説いてんのか」
不意に後ろから声がする。
振り返るとそこには、大きな背格好をした2人の男が立っていた。
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キエ(プロフ) - ユメさん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます! (2019年4月29日 22時) (レス) id: 7ecf668470 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ - 内容こってて好きだな (2019年4月29日 1時) (レス) id: 8bc30f3fbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キエ | 作成日時:2019年3月31日 22時