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3話 蛇柱様 ページ5

月が赤く染まった。


 でも、おかしい。

 痛みを感じない。

 それどころか、激しく打つ鼓動を感じる。



A「どうして……?」



どうして、私は生きているの?

 鬼に殺される筈だったのに…

この体とこの罪から解放される筈だったのに…



 だけど、どうして?

 この頬を伝う涙は死に損なったからじゃない。

 

 この涙は、きっと生きたかったからだ。


 
 この世に未練なんてない筈だったのに、

 未練なんて…

 

 その思いとは裏腹に、さらに涙が溢れる。



すると、




はらり





目の前の男が私を抱き寄せた。


予想もできない出来事に思考が停止する。





凍てつく森で長時間戦った、
寒さで感覚のなくなった体だけでなく、

心にまで彼の熱が伝わる。




あたたかい…



体も心も緊張から、
ずっと抱えてきたこの気持ちから

溶かされていくようだった…




伊黒「お前、俺の継子にならないか」



A「つ、継子…??」


よく見れば左右非対称な美しいオッドアイ、

縦縞の羽織り

さっき鬼を切った太刀筋も




A「へ、蛇柱様!!!」



すぐに姿勢を整える。挨拶をする。




A「大変恥ずかしい姿をお見せしてしまい、申し訳ございません。この度は増援ありがとうございます。我々の力不足でこんな負傷を…」



しかし、そんな形式ばった挨拶は簡単に遮られる。



伊黒「まぁ、お前の返事は関係ない。お前は今日から俺の継子だ。有り難く思え。とにかく、傷をなんとかしないとな、屋敷に戻るぞ」


A「へ、蛇柱様!?」





ぐっ





一瞬の出来事だった。

蛇柱様の顔がそこにある。

 



ドキッ ドキッ






この心音が聞こえてしまうんじゃないかと思うほど近くに、



私の手を取って立ち上がると、




伊黒「小芭内」


A「…へ?」


伊黒「俺のことは、小芭内でいい」



お、小芭内?



A「そ、そんな!柱に対して、恐れ多いです…」

伊黒「そうか?では…」




真剣に考え込む蛇柱様、

綺麗な横顔をしている。



戦いで力を出し切った私に何気なく合わせてくれるゆっくりとした歩調、


蛇柱様を見ていると、
ふとさっきの出来事を思い出す。



蛇柱様の温かな声、優しい眼差し



意外だな、
蛇柱様ってもっと冷たい人なのかと思ってた。





そんなことを考えると、
私の顔が熱くなるのを感じずにはいられなかった。


この日のことを私は一生忘れることはないだろう。

4話 師範→←2話 全ての感覚で



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設定タグ:鬼滅の刃 , 伊黒小芭内   
作品ジャンル:アニメ
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みぃたん(プロフ) - 林檎さん» ありがとうございます!続編はもっともっと楽しんでいただけように、がんばって書きます♪ぜひぜひ覗いてみてくださいね! (2020年2月4日 0時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
みぃたん(プロフ) - ドラゴンちゃんさん» 応援ありがとうございます!続編も少しずつではありますが更新していきますのでそちらも読んでいただけると嬉しいです♪ (2020年2月4日 0時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
みぃたん(プロフ) - 夏蜜柑さん» 続編も伊黒さんの魅力たっぷりに書けるようにがんばりますね♪いつもありがとうございます! (2020年2月4日 0時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
みぃたん(プロフ) - カンナさん» ありがとうございます!伊黒さん素敵ですよね!またよろしければ続編も見てくださると嬉しいです♪ (2020年2月3日 23時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - うわあああ(嬉しさの叫び) 楽しかったです!推しは伊黒さんです!楽しかったです!(大切なことなので二回言いました) (2020年2月1日 22時) (レス) id: 618a98841b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みぃたん | 作成日時:2020年1月13日 11時

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