35話 愛おしい日々 ページ37
〜伊黒side〜
伊黒「A…」
俺は雨の中、傘もささずAを探した。
もちろん、傘を持っていなかったわけではない。
傘をさす余裕がなかったのだ。
そして、Aを探す間、Aと過ごした街並みに彼女の姿が映り、俺の頭の中にはAと過ごした日々が次々に駆け巡った。
ーーーいつもAと買い出しに行く店。
Aはただの買い出しなのにデートのように喜んでくれた。
荷物が多いから自分も行くだなんて、そんなの適当についた嘘だ。
本当は俺もAとの週に一度のこの時間を楽しみにしていた。
いつも献立を二人で悩んだ。Aが口にするのは俺の好きな食べ物ばかりだったな。
それから、買い出しの帰り道、二つの並んだ影をみるのも好きだった。この世界に俺とA二人だけになってもいいと思っていた。
ーーーこの前2人で出かけた甘味処。
Aは甘味が好きだ。
そんなAをいつか連れて行くために、日頃から甘露寺に美味しい甘味処を聞いていたのだ。
まさか、その成果もなくAに連れてきてもらうことになるとは、内心少しがっかりした。
だが、Aと食べる甘味は一段と甘く感じた。
ーーー俺のためにAが見つけてきてくれた飴細工の店。
職人の手つきを俺は覚えていない。
そう。俺はその時、飴細工が出来上がる様を目を輝かせて見るAを見ていたからだ。
そんな輝く彼女の大きな瞳に吸い込まれそうになった。
ーーーAにプレゼントを買った簪屋。
俺と出かける時には、いつもよりお洒落をしてくれるAが愛おしくて堪らなかった。
その時いつも付けてくる簪がAのお気に入りだなんてことはずっと知っていた。
だからこそ、口には出さないものの悲しむ彼女の顔は見ていられなかった。なぜか俺まで苦しくなった。
そして、閉店間際駆け込むように入った簪屋で、彼女の屈託のない明るい笑顔を思い浮かべながら簪を選んだ。
その簪はハナミズキという花がイメージされている。とその店の主人から聞いた。
そして、その花の花言葉の一つは俺にピッタリだった。
『私の想いを受けてください』
穢らわしい血の俺にはAを幸せにすることはできない。彼女に好きとは伝えられない。だから、俺はひっそりと簪に想いを託すことにしたのだ。
そんなことを思い出している間に、
Aの好きだった街中を見渡せる丘に辿り着いた。
伊黒「A…」
愛おしい彼女はそこにいた。
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みぃたん(プロフ) - 林檎さん» ありがとうございます!続編はもっともっと楽しんでいただけように、がんばって書きます♪ぜひぜひ覗いてみてくださいね! (2020年2月4日 0時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
みぃたん(プロフ) - ドラゴンちゃんさん» 応援ありがとうございます!続編も少しずつではありますが更新していきますのでそちらも読んでいただけると嬉しいです♪ (2020年2月4日 0時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
みぃたん(プロフ) - 夏蜜柑さん» 続編も伊黒さんの魅力たっぷりに書けるようにがんばりますね♪いつもありがとうございます! (2020年2月4日 0時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
みぃたん(プロフ) - カンナさん» ありがとうございます!伊黒さん素敵ですよね!またよろしければ続編も見てくださると嬉しいです♪ (2020年2月3日 23時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - うわあああ(嬉しさの叫び) 楽しかったです!推しは伊黒さんです!楽しかったです!(大切なことなので二回言いました) (2020年2月1日 22時) (レス) id: 618a98841b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みぃたん | 作成日時:2020年1月13日 11時