賢者の石 ページ19
心配した、という校長に、もう少しで手遅れだった、とハリーはこぼした。あれ以上は石を守ることは不可能だっただろう、と。
「いや、『石』ではなくて、ハリー、大切なのは君じゃよ……君があそこまで頑張ったことで危うく死ぬところだった。一瞬、もうだめかと、わしは肝を冷やしたよ。『石』じゃがの、あれはもう壊してしまった」
「壊した？」ハリーは呆然として言った。
「でも、先生のお友達……ニコラス・フラメルは……」
あの後、調べて分かったのだが、賢者の石を制作した、ニコラス・フラメルはホグワーツ魔法魔術学校の校長、アルバス・ダンブルドアの友人だったのだ。
ダンブルドアはニコニコと笑いながら言う。
「わしはニコラスとおしゃべりしてな、こうするのが1番いいと言うことになったんじゃ」
こういう事、とは賢者の石を壊す、ということだろう。
「でも、それじゃニコラス夫妻は死んでしまうんじゃありませんか？」
「あの2人は、身辺をきちんと整理するのに十分な命の水を蓄えておる。それから、そうじゃ、2人は死ぬじゃろう」
ハリーは驚いた顔をした。
ダンブルドア曰く、死とは、きちんと整理された心を持つ者にとっては次の大いなる冒険にすぎない。そして、石はそんなに優れたモノではない。石は、人間にとって、最も最悪な物を生み出す物である。
ハリーは横たわりながら、ダンブルドアに聞いた。
「ヴォルデモートは他の手段でまた戻ってくるんじゃありませんか。つまりいなくなってしまったわけではないですよね？」
「ハリー。いなくなっわけではない。どこかに行ってしまっただけじゃ。誰か乗り移る体を探している所じゃろう。本当に生きているわけではないから、殺すこともできん。クィレルを死なせてしまった。自分の家来を、敵と同じように情け容赦なく扱う」
それはさておき、とダンブルドアは話題を少しばかり変えた。
「ハリー、お前がやったことはヴォルデモートが再び権力を手にするのを遅らせただけかもしれん。そして次に誰かがまた、一見勝ち目のない戦いをしなくてはならないのかもしれん。しかし、そうやって彼の狙いが何度も何度もくじかれ、遅れれば……そう、彼は2度と権力を取り戻すことができなくなるかもしれん」
ハリーは少しだけ頷いて、話を変えた。
「先生、僕、他にも、もし先生に教えていただけるのなら、知りたいことがあるんですけど……真実を知りたいんです……」
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作者名：蒼使ヰ | 作成日時：2020年8月6日 16時
