スリザリンの生徒 ページ46
何と言う、推理、そして行動力――――……。内心で舌を巻くスネイプである。だが。
「ポッターをそのお仲間を、なるだけ守る、ということはわかった。しかし、なぜそれをいちいち言いに来るのか」
「それは、なぜ先生に言いに来たのか、と？」
さっき話したはずですが、と首をかしげるAに、まだ幼さを感じる。
「いや、そうではなく。ミス・サトウ、君はスリザリン寮だ」
グリフィンドール寮とは関係ないだろう、放っておけばいいと暗に告げれば、二カっと、Aの顔に、その歳に似合う、無邪気な笑みが広がる。
「それだとしても、友達は友達、大切ですから」
友達はほうっておけません。
それに、と声が落ち、フッと、彼女の顔に、その歳に似合わない、暗い笑みが射す。
「危険な事には、首、突っ込みたくないですから」
頼れるときに頼らなきゃ。
ね？ とにっこり、と笑う目の前の少女に、スネイプは面白い、と感じるものがこみあげてくる。
この目の前の生徒は、他の寮の生徒にも優しく接し、その優しく接された生徒から、どうしてあなたみたいな優しい人がスリザリンなのかしら？ でも君ってなんでスリザリンなのか本当にわからなくなるよ。彼女はスリザリンにいるべきではない、と言われている。
実際に、スネイプ彼自身も、他の寮の生徒と共に行動している彼女を見て、不思議に思った。
スリザリンの生徒らしからぬ生徒。そうだと思っていた。今さっきまでは。
あの組み分け帽子は間違っていなかったのだ。彼女は、A・サトウはちゃんとした、スリザリンの生徒だ。
スリザリンではもしかして、君はまことの友を得る。どんな手段を使っても、目的遂げる狡猾さ。今年の入学式で、帽子が歌った歌詞だ。
彼女が、まことの友を得たかどうかは、ハッキリとはわからないが、「どんな手段を使っても、目的遂げる狡猾さ」、まさしく、A・サトウという人間を表している。
「では、失礼します」
にっこりとした笑顔のまま、Aは会釈をして、地下教室から外へと出た。きっと、あの笑みにも、忘れるなよ、という意味が入っているのかもしれない。
スリザリンの生徒は、狡猾さや断固たる決意を持っている生徒が、選ばれている。悪い意味にもとらえてしまいそうだが、これは、鋭い洞察力や機転が利く発想、俊敏な行動の事を意味し、そして目的達成の信念や周囲を惹きつけるリーダーシップを表している。
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作者名：蒼使ヰ | 作成日時：2020年6月3日 19時
