二人の少女は ページ37
図書館にこもり、『ニコラス・フラメル』を調べていたら、いつの間にか十二月も半ばに来てしまっていた。
紅葉もまだ楽しんでいなかったのに、ある日、大広間に向かう途中の窓を見れば、雪が深く積もっていたのだからなんとも不思議だ。
そして城中はあることで浮足立っていた。クリスマス休暇だ。
もちろんAはクリスマス休暇を家で過ごす、と決めていた。外国はどうか知らないが、日本は年末近くは家族で過ごすことが多い。
そしてそれはマルフォイやミリセント達もそうだということが、わかった。
寒々しい地下室へ続く廊下とは打って変わって、豪奢な暖炉の火が温かく照らす談話室で、マルフォイが自慢げに取り巻き達に話していたからだ。曰く、クリスマスにはダンスパーティーを開いてお偉いさんを招く、とか。
そして、ハリーがクリスマス休暇には家に帰らない事も、休暇まであと一日、という今学期最後の魔法薬の授業でわかった。
スネイプ教授の地下教室は不思議なもので、なぜか、同じ地下なのにスリザリンの談話室とは打って変わって、吐く息が白くなるほど寒かった。なので、生徒たちは熱い窯に近づいて暖をとっていた。
「かわいそうに」マルフォイが暖を取っている生徒達から一歩前に出て、言う。その時丁度、教室にハリーが入って来た。
「家に帰ってくるなと言われて、クリスマスなのにホグワーツに残る子がいるんだね」
クラッブとゴイルがこれ見よがしにクスクスと笑う。
この教室が温かくて、そして、ミリーが放してくれたら……Aは手をこすり合わせながら思った。そしたら、マルフォイの足を踏んでるのに……。
顔は殴ったらかわいそう、腹を殴って臓器に影響が出たら取り返しがつかない、では足を踏んだら？ そこまで問題はないだろう。マルフォイを黙らせるのにはそれが一番。というのが最近得たAの想像だった。
マルフォイは「次の試合には大きな口の木登り蛙がシーカーになるぞ」などとはやし立てていたが、誰も笑っていなかったし、ハリーも無視を決め込んでいた。
誰も笑わなかったのは、乗り手を振り落とそうとした箒に見事にしがみついていたハリーに、感心していたからだ。
魔法薬のクラスを終えればすぐにミリセントに捕まった。
「私、Aにい〜っぱい手紙書くからね！」
「うん、私もたっくさん送るね」
二人の少女はそこで人目も気にせず少しだけ、目から涙をこぼした。
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作者名：蒼使ヰ | 作成日時：2020年6月3日 19時
