箒の異変 ページ32
シーカーのハリーが何かに向かって一直線に飛んでいく。その後ろからすぐに、スリザリンのシーカー、テレンス・ヒッグズも追いかけ、瞬く間に大接戦になった。
グワーン！ とグリフィンドール生から声が上がった。何と言っているかわからないが、多分怒りを叫んでいるのだろう。スリザリンのキャプテン、マーカスがハリーの邪魔したから。
これは喜ぶべきなのだろうが、Aはハリーの状態を見て、ちゃんとは喜べなかった。ハリーはコースを外れ、かろうじて箒にしがみついている状態だったからだ。
横でマルフォイが双眼鏡を目に当てて笑っている。少しムカついたので足を踏んでやった。
「イタッ！ 何だよ」
「別になんでもないよーぅ、だ」
ジョーダンが中継を続ける。「えー、誰が見てもはっきりと、胸糞の悪くなるようなインチキの後……」
「ジョーダン！」彼の横からマクゴナガル先生の睨みが入る。
「えーと、おおっぴらで深いなファールの後……」「ジョーダン、いい加減にしないと……」
もちろん、スリザリン側から実況者に対してブーイングが入る。はいはい、とジョーダンはめんどくさそうに言いなおす。
「誰にでもあり得るようなミスですね。きっと」
きっと、とつけるあたり皮肉がましい。
「スリザリンの攻撃です――――クァッフルはフリントが持っています――――スピネットが抜かれた」
フリントは、グリフィンドール生を次々とぬかし、そして、大歓声があがった。もちろんスリザリン生からで、フリントが得点をしたからである。
これでスリザリン対グリフィンどールは１０対１０。同点だ。
「おや？」マルフォイが嬉しそうな声を上げる。またもや双眼鏡を目に当てている。
「天下のポッター殿は箒の乗り方を忘れたようだぞ！」
「はぁ？」
マルフォイの声で周りの生徒も選手よりも上――――ハリーを見る。ハリーは確かに箒がうまいはずなのだが、今ではグルグル回る箒の柄にただただぶら下がっているだけである。
「マルフォイ、貸して」
もっとよく見ようとAはマルフォイから双眼鏡をひったくるようにして借り、目に当てる。双眼鏡ごしに目に入ってきたのは、確かに片手で箒の柄にぶら下がっている様子。
おかしい。眉をよせながら、首が痛くなってきたので頭を少し下げれば自然に反対側に座っているハーマイオニーが目に入る。
ハーマイオニーは双眼鏡を目に押し当て、観客席を見ていた。
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作者名：蒼使ヰ | 作成日時：2020年6月3日 19時
