ノックアウト？ ページ25
ロンが見事な魔法をかけて宙に浮かせた棍棒は、そのまま持ち主の頭に落ちた。
トロールはフラフラしたかと思うと、お手洗いを揺らしながらドサッとその場にうつ伏せになった。
「これ……死んだの？」ポツリと呟いたのはハーマイオニーである。
「いや、ノックアウトされただけだと思う」
少しだけかすれた声でそう言うのは、ハリー。彼はそのままトロールの顔あたりにかがみこみ、自分で刺した杖を引き抜く。「ウエー、トロールの鼻くそだ」
再度バタン！ とお手洗いの戸が開かれた。四人はそろって開けた主を見ようと顔を上げる。そこには、まず初めにマクゴナガル先生が目と場所に飛び込んできた。その後に、スネイプ先生、クィレル先生と続く。
クィレル先生は、確かに闇の魔術に対する防衛術の担当者だが、今の様子――――胸を押さえて座り込むのを見て、Aは内心、どうしてこんな風になるのに来たのだろう……と首を傾げた。
スネイプ先生がトロールを覗き込み、マクゴナガル先生はA達四人を見ていた。
「いったい全体あなた方はどういうつもりなんですか」
マクゴナガル先生の声は冷静だが、確かに怒りに満ちている。ちょっとAが目線を横にずらせば、ロンはまだ杖を構えた格好でいる。
「殺されなかったのは運がよかった。閣僚にいるべきあなた方がどうしてここにいるんですか？」
どうやら、とAは肩をすくめる。
どうやら、一人飯をしたあとにイザコザがあり、我々は閣僚に戻っていなければいけなかったらしい。
「マクゴナガル先生。聞いてください――――ハリーとロンの二人は私を探しに来て、それで、Aは、私を止めに来たんです」
小さな声だったが、たしかにハーマイオニーが声を出した。マクゴナガル先生が「ミス・グレンジャー！」と驚きの声を上げた。
ハーマイオニーがやっと立ち上がる。そして彼女の口から出た話は信じられないようなもの――――嘘だった。
「私がトロールを探しに来たんです。私……私一人でやっつけられると思いました――――あの、本を読んでトロールについてはいろんなことを知ってたので」
杖が落ちる音がした。きっとロンだろう。
しかし、確かにこれは驚くべきことだ。あのハーマイオニーが、先生に嘘をつかないハーマイオニーが教師に嘘をついている。
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作者名：蒼使ヰ | 作成日時：2020年6月3日 19時
