スイーツの力 ページ22
「あー……ハーマイオニー？ 大丈夫？ ……のわけないよね」
ごめん、と言えば鼻声のハーマイオニーの返事が返ってくる。「ううん、大丈夫よ」
Aはハーマイオニーが入っている隣の個室に入り、内側から鍵をかけさっそく、と膝にナフキンを広げていた。
「あのーう、ハーマイオニー？」
「……なぁに？」
おずおずと聞けば、まだ鼻をスンスンさせながらも返事が返ってくる。
「ハーマイオニーは、そのー……どうしてお手洗いの個室でー……あー……いるの？」
流石に『泣いているの？』なんて聞けないAである。
暫くの沈黙の後、ハーマイオニーの声が震えながら、ゆっくりと答えてくれた。
なんとも胸糞の悪くなる話がハーマイオニーの口から出ていたので、驚いた。それと同時にAのお腹のあたりがムカムカと熱くなる。
どうやら、今日行われた『妖精の魔法』の授業でハーマイオニー達グリフィンドール生も、あの『物を宙に浮かす魔法』をやったらしく、そこでハーマイオニーはロンと喧嘩をしてしまったようだ。
しかも、その後ロンはなんとも残酷な彼女の真似をした挙句、「悪夢みたいな奴」とか「だから一人も友達がいない」とか言ったらしい。
「そりゃあ、ハーマイオニー！ あんた怒って良いし、泣いたって！」
あー！ とAが何かを吐き出すかのように叫べば、クスクスと隣から聞こえてくる。その様子に、今度はハーマイオニーにも少しだけイラつく。
「そういえば、A、あなた何か食べてるの？」
「え、なんで？」
ハーマイオニーの鼻スンスンもだいぶ落ち着いてきたようだ。
「だって、甘いにおいがするような気がして……それとたまに何かを飲み込んでいるかのような音がしたから……」
地獄耳で地獄鼻かい。とAは思わず突っ込みそうになる。が、ちょっと考えてからハーマイオニーに聞く。「なにかアレルギー、とかない？」
「え、ええ……ないけれど……。どうして？」
Aは受け取ってね、絶対。と言ってから杖を取り出して数回手首をビューン、ヒョイと振る。そして、カップケーキに向けて、呪文を言いながら手首を振った。
とたんにカップケーキは空飛ぶカップケーキになり、隣の個室へと消えた。
「え、カップケーキ……？」ハーマイオニーの声が困惑したようなものになる。
「スイーツがあれば、きっと友達になれる〜、だよ。スイーツは気分を明るくさせるからね」
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作者名：蒼使ヰ | 作成日時：2020年6月3日 19時
