真夜中を疾走する ページ14
「いい子だ。しっかり嗅ぐんだぞ。隅の方に潜んでいるかもしれないからな」
「なんで？ だって、私達……」不思議そうなAの声を、もう一つの、この部屋にはいない声が遮った。五人は揃って飛び上がった。――――マルフォイではない。フィルチだ！
管理人で、嫌われ者のフィルチがそのペットのミセス・ノリスに話しかけている。
「どっかこのへんにいるぞ。隠れているに違いない」
Aはサーっと背筋に冷たい氷が下りて行くような気がした。それと同時に誰かがAの腕をつかみ、走り出す。
何が何だかわかっていないAをよそに、ハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビルは廊下を疾走する。時々Aの目に入って来たのは、たくさん並んでいる鎧。
ネビルが突然悲鳴を上げたと思えば、後ろから誰かが追ってくるような足音がする。そして、すさまじい、鎧か何かが崩れるようなすさまじい音がした。城中の人という人を起こしてしまいそうな程、その音は大きい。
誰かが転んだのだろうか。いや、今はそんなことどうでも良い。
「逃げろ！」
Aの腕をつかんで走っていた人が、ハリーの声を張り上げる。それを合図にまた、腕が引っ張られて、走り出す。
後ろも向かずに――――全速力でドアというドアを通り、次から次へと廊下という廊下を駆け抜け、今、どこなのか、Aは見当もつかない。
「フィルチを巻いたと思うよ」
ようやく止まった一行は、思い思いの格好で息を整えていた。汗もうっすらとかいている。
「こ――――ここ――――は？」座り込んで喘ぎながらAは呟く。
「多分――――えー ―――――『妖精の魔法』の――――近く――――だと思う」ロンが答えてくれた。
ということは、まだ４階だ。
ハーマイオニーが「だから言ったじゃない」と胸を押さえながらあえぎあえぎ言ったのを聞いた。
「グリフィンドール塔に戻らなくちゃ、できるだけ早く」
ロンがそう言うので、Aも酸素を欲しながら、そうだ自分も戻らなきゃ、と頭の片隅で考える。
「マルフォイにはめられたのよ。ハリー、あなたもわかったでしょう？ Aがさっき言ったように、はじめから来る気なんかなかったんだわ――――マルフォイが告げ口したのよね。だからフィルチは誰かがトロフィー室に来るって知ってたのよ」
ハーマイオニーの声を聴いて、なるほどと頭の隅で考えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 95人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼使ヰ | 作成日時：2020年6月3日 19時
