空を自由に飛びたいな ページ11
ハリーが勝手に箒に乗って、しかも危ない飛び方をした、というのにマダム・フーチは少しだけ怒ったような顔をしたが、マクゴナガル教授がつれて行ったのであれば、彼女に任せる、と言って授業を再開した。
「箒の持ち方、箒から落ちないのり方はもうわかっている筈です！ さあさあ！ 箒にまたがって！ 今度は！ 私が笛を吹いたら二メートルほど上昇して、それから降りてきてください。いいですね？ 私が笛を吹いたら！ 二メートルほど！ ですよ」
生徒たちは慌てて元の位置に戻り、箒にまたがる。
そして今度は、ピーッ！ とちゃんと笛の音が響いた。それと同時にAは地面から体を押し上げるように足でける。
なんというか、重力の少ないどこか遠くの星で軽くジャンプをしたようだった。
「そこで、身体をちゃんとおこして背筋を伸ばす！ そうしないと下がってきますよ！ ミス・サトウ！ もっと背筋を伸ばして！！」
下からマダム・フーチが呼びかけ、注意をする。それを受けてAは背筋をゆっくりと伸ばし始める。マダム・フーチが下で、もっと！ もっと！ と言っているのが聞こえる。
ぐらついているので、恐怖の方が今は勝っているが、目をつむって箒の柄をこれでもかと握り、足で箒をしっかりと挟む。そして、いっきに上半身を上げた。
思わず、眩しくて目を開ける。
太陽の光が、まっすぐにAを照らしていた。
それだけの光景。しかもただ数メートル上に上がっただけ。それなのにこんなにも、こんなにも違うものなのか――――。
目の前のグリフィンドール生を見れば、彼らの多くも口をポカンと開けている。それが可笑しくて、横を見れば彼と目が合う。彼はただただ笑った。
そういえば、マルフォイは箒にとっくに乗れてたなぁ……と間抜けずらが見れなかったことを少々残念に思うが、しかし。
光が彼を照らす。
それだけの光景。しかも彼の笑顔は少々馬鹿にしている表情も入っている。それなのにこんなにも、こんなにも――――。
「すごかったね」それがAの正直な感想だ。それ以外に何があるというのか？
「あっ、そっかぁ、Aは初めてなんだ！ 箒に乗るの！」
ミリセントと寮に帰る道をたどりながら話す。そうすれば、前を歩いていたマルフォイがいちいち歩くスピード遅くして話に入ってくる。
「凄い顔してたな」
「おだまり」
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作者名：蒼使ヰ | 作成日時：2020年6月3日 19時
