其の漆 ページ9
「…そうだな。」
短く相槌を打った冨岡は、淡い空色の湯のみを置いて木刀を手に取った。試しに振ってみると、ぶんぶんと空気を切る小気味良い音がする。不死川も「あァ」と相槌を打って、木刀を手に取った。
「そっ、それじゃあいきますよッ!!!」「待てェ!!テメェただでさえ腕力やべぇんだからそんな思いきり来るんじゃねェェ!!」
Aが思い切り木刀を振り下ろしたのと同時に、特訓は始まった___
___数時間後___
隠が持ってきた木刀は、いくつ折れたのだろう。木の破片で汚れた庭の上で、三人はぜぇぜぇやっていた。輝哉の言った特訓とは、力付けの事ではない。Aがかすかに使える呼吸方の威力を引き延ばすためのものだ。しかし、不死川と冨岡はどうすればいいのか分からないままAが始めてしまったので、ただただ力が尽きるまで木刀を振り回すだけになってしまったのだ。
「おい…風の呼吸の基礎は掴めたかァ…」「…いいえ、全然…」「…」
破片の少ない土の上で寝転んだまま不死川とAはそんな会話を交わした。
Aは勢い任せに木刀を振ってしまったこと、木刀が尽きるまでがむしゃらに戦い続けてしまったことを後悔しているかのように「反省しなきゃなぁ…」と呟いている。
「…ところで月見里。他の柱の稽古は受けなかったのか。風や水の他に使える呼吸は無いのか。」
不意に冨岡が、木刀の破片を拾いながらAにそう問いかけてきた。
質問に対し、Aはこう答えた。
「はい。他の柱の皆様にも教わったのですが全然駄目でして…。蟲や炎は繰り出そうとしても繰り出せないし、岩なんて全くコツを掴めそうにないです…」
そう。彼女は本当に水と風以外の呼吸法を繰り出せないのだ。派生呼吸も出来ない。
さらにその力も弱く、雑魚鬼以外に呼吸法を使うことは滅多にないと言うほどだ。
「なるほど。なら今お前の刀を使って呼吸を出してみてくれ。それを見て打開策を出そう。」
冨岡にしてはまともな考えじゃねぇかと言わんばかりに顔を一瞬まじまじと見つめ、不死川も「そうだなァ。そっちの方がいいんじゃねェか?」と賛同した。
Aもうなずき、自身の所有する日輪刀に手を伸ばし、刀を抜いた。薄い青緑色に光る刀には「悪鬼滅殺」の文字が掘られていた。
隠に頼んで的も用意してもらい、準備は整った。
「そ、それでは行きますよ……!!」
--大正コソコソ噂話--
Aは蜜璃との稽古が一番楽しかったらしい!
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うい(プロフ) - ものさしおぢさん» ありがとう! (2021年9月29日 16時) (レス) id: 2d17a24ecf (このIDを非表示/違反報告)
ものさしおぢ(プロフ) - ういさん» コメントありがとうございます!わかりました!その前のお話は文字数の影響で出来ませんが、次回から間隔を開けてお話を書きます! (2021年9月29日 7時) (レス) id: 0bd4004e6c (このIDを非表示/違反報告)
うい(プロフ) - めっちゃ内容いいです!あの、もう少し文字の隙間開けてくれると読みやすいと思います! (2021年9月29日 6時) (レス) @page4 id: 2d17a24ecf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ものさしおぢ | 作成日時:2021年9月27日 18時