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※羽生side※
大会2日目。FS。
いつものように関係者席に座り、Aの演技を待つ。
それにしても…年々ジュニアもレベル上がってきてるよなぁ…まぁ、世界ぶっちぎりで活躍してるAの強さは別格だけど…
なんて思ってたらAの番がやってきた。
今日は会場入りの時間が違ったから朝は会ってない。
今シーズンはどんなプログラムなんだろ…
淡い緑と紫のコントラストに、フワリとしたスカートのデザインの衣装すごく似合ってる。
名前が呼ばれ、ひときわ歓声が大きくなる会場。
それほどみんなAに注目してるってこと。
そうだろそうだろ。俺の妹は本当にすごいんだぞ。って、別に自分のことじゃないのに鼻が高くなりそうな気分。
「Aがんばーー!!」
歓声に混ざって激励の声をかけたけど、多分歓声で聞こえてないかな。
ルーティンをして位置に着く。
曲が流れ始めた。
どこかで聞いたことある…なんだっけ…えーっと…
あっ!Aの好きなアリエルの曲だ!
へぇ…いつかこれで滑りたいって前々から言ってたけど斎藤コーチからオッケーもらったんだ。
真剣にAの演技を見つめる。
どんどんAの世界に引き込まれる。
もうここはスケートリンクではなく、海の中。
本物のアリエルが音楽に合わせて自由に泳いでいる。
ふと、なんとも言えない笑顔が見えた。
可愛いとも違う、美しいに近いような、艶っぽいような、妖艶っていうような…その笑顔でドキッと心臓が跳ね上がり、いつもより激しい鼓動が止まらない。
「ずるい…」
はぁ…っとため息をつきながら後ろ髪をグシャグシャと触る。
周りもドンドン引き込まれていく。
最後のポーズ。
シンと静まり返る会場。
海の世界から現実へと帰ってくるのに観客は数秒かかってしまい、遅れて聞いたこともないような歓声に包まれる。
投げ込まれる花、プレゼントが真っ白なリンクを彩っていく。
真ん中でいつものように笑顔で挨拶するAはいつものAに戻っていた。
それでもさっきからのドキドキが直らないし、今自分がどんな顔してるのかも不安だったからささっと関係者席を立って中へと入った。
「はぁ……Aってあんなに綺麗だったっけ…?」
トイレに駆け込み、洗面台の前で誰もいないのを確認してからため息を吐いた。
「こっちの気も知らないでさ…」
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レイラ - これからも更新頑張ってください!楽しみにしています!! (2019年3月12日 20時) (レス) id: f427d391ac (このIDを非表示/違反報告)
まあ - ゆづ兄視点のお話も好きです!早くカナダで一緒に練習してほしいなぁ (2019年1月1日 20時) (レス) id: 634821c578 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - 更新ありがとうごさいます!!ユヅ兄も意識し始めたのかな?続きが楽しみです。待ってます!(^∇^) (2018年12月23日 3時) (レス) id: 9a360f115b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏 | 作成日時:2018年12月17日 22時