4日目 ページ6
三雲「Aさんって、なんで迅さんのこと迅って呼ぶんですか？」
ふとそんな事を聞かれた。
察しのいいメガネは嫌いだよ私は。
『んー。みんながそう呼んでるから？』
三雲「そ、そんな理由で…？」
うん。でもどうして？ と今度は私がメガネくんに質問をする。
三雲「Aさんも、迅さんですよね。だから、自分の苗字で他者を呼ぶのは気にならないのかな、って。普通親戚の人は下の名前で呼んだりするじゃないですか。」
特に深い意味は無い疑問のようだった。
そばに居た遊真も私の言葉に耳を向ける。
千佳ちゃんは不在だった。
彼らだけが私に注目して、私の答えを待っていた。
『昔はね、下の名前で呼んでたよ。でもさぁ、"悠一くん"とか、"悠一ぃ"って呼んでたらあからさまに血縁者だって分かっちゃうじゃん、？それが嫌なの。』
私チカンする人とは血繋がってないもん。と言い退ける。
名前に関しては、本当にそれだけだった。
特に理由なんてなかった。
小南だって、みんなが迅のことを「迅」と呼んだ。
私はそんな彼の事を下の名前で呼ぶことはなくなった。
初めて私が彼のことを苗字で呼んだ時、酷く醜い顔をしていたような気がする。
私のことは視えないから、知れなかったんだろう。
"おれ、なんかした？"と心配そうに私の肩を掴む彼の顔なんか、忘れてしまった。そもそも、そんな彼の顔を私は直視していただろうか。
『迅はね、迅だけだから。それに私、自分は名前で呼ばれる方が好きなの。』
自分の名前がお気に入りなの。
彼が私を呼んでくれる名前が。
ずっと好きだから、これでいい。
そう言って、後輩たちに笑った。
遊真は私の顔を見つめていた。
遊真「わかんないな、Aせんぱいは」
『女は不思議なくらいが魅力的なの』
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作者名：いちごおれ?? | 作成日時：2023年2月20日 23時
