海底に棲むきみ【迅悠一】 (ページ4)

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2日目ページ4

『あ』

迅「あら、久しい顔だことー」

わぁ。なんてわざとらしそうに驚く素振りをするソイツを余所に、私は傍を通り過ぎようとする。

読みそびれた。

迅「ちょちょちょ、Aちゃんタンマ。タンマ。」

腕を掴まれ、悲しくも逃げそびれた私は迅に向き合った。

『どうされましたかね。』

迅「めっちゃ探したんだよ？おれの行動を一方的に視といて避けないで欲しいなぁ。てかおれがAのこと探してたの視えてたでしょ。」

ちょっと悪趣味じゃない？
なんて彼は付け足しては、何食わぬ顔で私を見下ろしてくる。

視えてたのは事実だけど。迅に会うにはそれなりの対価が要るんだ。
本人は特に気にしていないらしいけど、私は気にする。

迅の副作用(サイドエフェクト)でどれだけの人が救われるというのだろうか。

私のは、人を救うことは出来ない。

『たまたまだよ。で、用事って？』

適当にあしらっては、要件を早く聞いて立ち去ろうとする。

迅「いーけどさ。ハイこれ。嵐山に渡しといてっていわれたの。」

受け取ったのは茶封筒。なんかしらの報告書か要請だろうか。
今見なくとも、後で見れば事済むので「ありがとう」と一言言ってはそれだけかと彼を問う。

迅「ん、それだけ。それだけだけど、おれと今から昼飯行かない？」

今は昼少し過ぎ。
彼は、私に"避けられている"と知っていてこんなお願いをする。気まづ過ぎないか。流石に。

『えーーーむり。私チカン魔の隣を歩く勇気ないので。オッキーくらいイケメンになってから出直してくださいな。』

迅「来世に期待ってこと？？？」

キッッッツ、と零す彼を諦めてねって諭せば、迅は"しょうが無いなぁ" と私を見逃してくれるのだった。

彼と離れると、後ろから「サイン、くれませんか…！」だなんて1人前に人生を謳歌している人間の声がする。
涼しい顔でソレに応えているであろう彼を思い浮かべ、
良くもまぁそんな薄っぺらい顔ができるものだとため息をついた。