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17日目 ページ27

1口、ペットボトルの水を飲んだ。

枯れきった喉には、たった1口の水が不味く思えた。


迅「良い子」

小さい子供をあやすような言い方。私の髪を撫でて、Aは偉いね。なんて言っている。

彼が、誰かにして欲しかった事が、これなのかもしれない。
私は、迅の過去なのかもしれない。


そう思うと酷く悲しかった。

しかし、涙は出なかった。
迅が来る前に泣き過ぎて頭も痛い。

もう、涙は枯れてしまったのだ。



迅「キスする?」

そんなことを言う彼は、優しい目をしていた。
なんて馬鹿らしいんだろう。

私だけじゃなくて、(悠一)だって辛いくせに。


迅「Aがしてよ」

メガネくんも千佳ちゃんも、遊真も。小南たちもみんなリビングにいるけど。バレやしない。
鍵は閉めたし、誰にも知られない。



『Aは、悠ちゃんのかぞくなのに。』

迅「それは昔否定した」

『覚えてるよ。そんなこと』


彼の顔の横にある髪ごと、右手で頬を包んだ。

ばからしい。本当に。

こんな事でしか自分を保つことが出来ない私たちが馬鹿らしい。
支部長が見たらなんて言うのかな。小南が見たらなんて言うのかな。


そう思うのに、迅の瞳に私だけ映っているのが嬉しくて、
私たちは触れるだけのキスをした。



顔を離せば、あの日から変わらない迅の瞳が見える。

迅「どうだった?」

『悠ちゃんの初めてうばっちゃった』

迅「おま、なんでそれ知ってんの、」

『私のSEがそう言ってる。』

迅「わー、ずっる。Aはどうなの」

あまりにも普通の会話に脳がバカになった気分だった。
迅の発する()に心が落ち着いていく。

『ないしょ。』

迅「ふーん?」

迅の傍まで寄れば、自然に腕を広げてくれる。そんな彼を抱きしめて、生きている事に安堵するのだ。



『レモンの味はしなかったかな』

迅「なんの味だった?」

『迅のにおい。』


匂いかー新しいね。 そう呟く彼の心臓の音が、私にはよく聞こえた。


_____________


迅さん落ちだし…ってことで、迅さんとの絡みの話多くなります。

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作者名:いちごおれ?? | 作成日時:2023年2月20日 23時

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