海底に棲むきみ【迅悠一】 (ページ15)

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?⃞日目ページ15

『悠ちゃんも、"迅"って言うの？』

「そうだけど」

ふぅん、そっかぁ。と女の子が零す。

『悠ちゃんみたいな、かっこいい人と同じ名前なの、なんかしあわせだね』

クスクスと、照れくさそうに女の子が笑った。

そんな少女を見て、少年は困った顔をする。
その先に言うであろう言葉が、副作用(サイドエフェクト)がなくともわかったからだ。

『お嫁さんになった気分。』

嗚呼、やっぱり。そんな顔で男の子は女の子を眺めた。
自分と同じ髪の色、自分と同じ瞳の色。
親が違う筈なのに、どうしてこんなにも似ているのか。
他人と似ているという感覚が、どこか気持ち悪かった。

別に、彼女のことが嫌いな訳では無いけれど。

『あ、でも、兄妹の方が近いかなぁ。悠ちゃんが旦那さんって、あんまり考えられないもんね。』

彼女の中では、そっちの方がしっくり来たようだった。
やっぱりお嫁さんじゃなくて、妹！そう言いながら楽しそうに笑っている女の子。

迅「おれとAは、兄妹にはならないよ」

その一言で、女の子は少年を見つめる。
その顔は不思議そうであった。

『どうして、？』

迅「おれとAは血が繋がってないから」

『繋がってるよ！！』

迅「少しだろ？それに、おれらは結婚出来る。
兄妹は結婚できないものでしょ」

流石に、女の子の事を妹だと扱える気がしない男の子から出た言葉だった。

傷付ける気も、ガッカリさせる気もなかったのだが、女の子には酷く重い言葉に聞こえたらしい。

そっか、
と顔を曇らせる女の子。

『じゃあ、悠ちゃんはAと結婚してくれるってこと？』

迅「予定は無い」

『だよねぇ、難しいなぁ。』

女の子の中で、
私と悠ちゃんは兄妹にはなれないのだと、そういう認識が染み付いた。

家族が居なくなる前の、幼き大人の会話だった。

『私は、悠ちゃんかっこいいからすき。』

迅「顔だけか。」

そういう2人は、布団の上で手を繋ぎながら座っていたのだった。