9日目 ページ12
やけに早い朝だった。
只今5時28分
携帯でしっかり時間を確認したから間違いない。
まだ空は薄暗く、あと少しで太陽も登り始める頃だろうか。
冬場の日の登る時間なんで知ったこっちゃない。
こんな時間に起きてしまうなんて、目覚めがいいのか
逆に眠りが浅いのか。
どちらにせよ、起きて早々に眠気がどこかへ飛んでしまった私は物音を立てないように部屋の扉を開けて、静かな玉狛の廊下を歩いていった。
いつも通りにリビングへ入る。
いつも誰かしら居るソコとは、空気感が違った。
今、この玉狛には何人の人が居るのだろうか。
みんな寝ているのだろうけれど。
1人は、どことなく寂しい。
静かなところは好きだった。
夜も好きだ。
星を見るのも、本を読むのも、
大勢で気疲れしない場はかなり好きだ。
それなのに、私は寂しいのが大嫌いだった。
『迅、寝てるのかな』
彼が起きてくれて、誰も居ない早朝に、一緒に居てくれたら。
そんなことを考えるも、彼がタイミング良く起きてくるはずがない。
1口だけ水を飲んだ私は、コップをキッチンへ置いたまま また廊下へと出ていく。
足は自然に自分の部屋の隣。
迅の部屋へと向かっていた。
ドアノブに手をかける。
彼はきっと寝ているだろう。
昨日は遅くに帰ってきたようだった。
布団に入るなりぐっすりと眠っている迅の姿が、嫌でも脳裏に浮かぶ。
『迅』
ぽつり、小さな声で彼の名前を呼んだ。
返事は返ってこない。
キイ、と軋む音を立てて扉を開ける。ドアの隙間からダンボールの山が見える。
最近ここへ来たな、
そんなことを思いながら静かに扉を跨いだ。
外はまだ薄暗かった。
小さな、微かな寝息を立てて、ぐっすりと眠っている迅が目に入った。自分と良く似た色の髪を布団へと流しながら。
私たちは、誰に似たのだろうか。
私の家族は彼しか居なくなってしまったし、彼も私しか家族が居ない。
だから、死んでも尚私たちが誰に似たかなんて知ることは無いのだろう。
ぺたり、と彼の頬に触れてみる。
温もりが肌に伝わる。
死んで逝った人々は、こうして触れることさえ出来なくなってしまった。
その目を開けて、
思う様に物語が進むはず無かった。
迅の部屋を出て、私はもう一度ベッドに横になって眠った。
布団の中は、あまりに冷たくなっていた。
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作者名:いちごおれ?? | 作成日時:2023年2月20日 23時