冷たい服従【灰谷蘭】

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賭けをした日からの3ヶ月はあっという間に過ぎた




蘭は遊び回るのをぱったりと辞めた

私ももちろんあれから蘭以外の誰とも寝ていない




それはまるで本当に結婚でもするんじゃないかっていう流れ


私は妊娠したいかしたくないのか、そしてこれからの人生に何を望んでるのかいつまでも答えを出せなかった




その3ヶ月の間、体はどんどんだるく、重くなっていった







「………望まない妊娠だったということですが」




淡白な診察室は蘭の部屋そっくり

このなんともいえない病的な匂いが私は嫌いなんだけど






同情の目を向ける医者との会話はぎこちなかった

いつまでも何も言わない私を見て、医者は唾を飲みこむと意を決したように告げる






「中絶という選択肢もありますが……」





命の重さを蘭から学んだつもりだった

学んだ気になってたけど




どうしてこの人たちがそんな憐れむような目を私に向けるのか、私は理解できない







『………いえ、大丈夫です。』





荷物を持って立ち上がる


私はやっぱり普通じゃない





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『堕ろさなくても、どうせ死ぬので』






診察室にいた人全員が何を言ったか理解してない様子だった







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部屋に戻る時には決断していた




最後の電話では、大きなうそをついた




それが嘘だとあいつが気づくまで、どれほどの時間がかかるだろうか





どんな顔するかな

その反応を見るまで死にたくないな





滑稽だよね





あの男は何も知らないんだから






いや、こんな男ごときのせいで死ぬ私の方が哀れか











『さよなら』








そう言って潤沢な金属の先を腹部に刺すまでの1秒間、色々なことを考えた







出会った日のこと

連れ去られた時のこと

死体処理について行ったこと

助けに来てくれたこと

クリスマスのこと

ボスを殺されたこと

馬鹿みたいな提案をしたこと



私は孤独じゃない




過去には一緒に過ごした仲間がいた



それを平気で壊すくらい寂しかったのはきっとあいつの方







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切れ味の悪い刃物がゆっくりと肉を切り裂く




敢えて急所を外したせいで痛くて苦しくて、ただただ辛い


意識を失うまで大分時間が延長されたっていうのに









結局私はあいつの何なのか。あいつは私の何なのか。








最後の最後まで分からなかった

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