冷たい服従【灰谷蘭】

39 【蘭side】 ページ39

『……ねぇ、賭け事しよ』




いつか聞いたような言葉だった

思い出す前に手に持ってたゴムを取られた





『これ、つけなくていいから』


投げ捨てられたアルミ箔を目で追う暇もなくAの顔を見続けた

感情が読めない




『……直に出して。こども、出来たら責任取って一生一緒にいて欲しい。嫌がらせの浮気とか、もう辞めにして。全部お互いの為に尽くす。』





何かと思ったらそんな、世間体じゃ有り得ないこと

平気で言ってしまうこいつはやっぱりイカれてる




「できなかったら？」

『………もう、会わない』




光のない瞳に吸い込まれそうになる

脳が考える事をやめて、思いのまま滅茶苦茶にしたいっていう本能に従いかける




「初めに行ったこと覚えてるよな？生かしたまま別れるなんて絶対させねぇから」


『…じゃあ、殺してよ。もしできなかったら』




あまりに残酷な提案だった

Aが何ともないように言うから、動揺しなかった



こいつがとんでもなく倫理観に欠けてる女だということを忘れていた

生命ができるかできないかを賭けに利用しようとするくらいの異常者





「……そんなんでいいんだ」

『もう分かんないの。だから、決めよう。どんな結果でも文句言わないから』





頭おかしい

ちょっとくらいマシになったとか思ってたけど






『博打のスリルが好きなんでしょ？ぴったりじゃん』




目の形を全く変えずに口の端だけつり上げて言う



覚えてたんだ。クリスマスに言ったこと


そんな事気にする状況じゃないのに、

少しだけ嬉しかった






「………のった」







腹を括るというよりは、もう投げやりのような感じだった

今はむしろ不心得者ぶりに魅力すら感じてる




だからやめられない、この女

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