冷たい服従【灰谷蘭】

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「A………」



さりげなく呼び捨てにされるといきなりベットに押し倒される


一瞬肩を竦めたが、何とか力を抜く



「ここ、痛そうだね………」


と、噛みたての傷を撫でられて、強く唇を押し当てられた

鳥肌が止まらない






今だ、灰谷蘭


ここまで身を呈したのだからさっさと仕留めてくれ


さぁ、入ってこい







『…………』





真上でハアハアしてるおっさんそっちのけにドアの方を見つめ続けた


物音ひとつしなかった





「A?」





…………なんで





ホール会場を出る時の、アイツのニヤついた顔を思い出す

あくまで私達は敵


この作戦遂行に、互いを信用できる要素なんて何一つなかった
ただあいつが梵天だったから、従うしか無かったから私はここにいるってだけ






そっか、裏切られたんだ

ただ私を酷い目に合わせたかったんだ



はめられたのは私の方か



全て覚ってしまって、収集つかないくらいの怒りが込み上げてくる







「！？」



馬乗りになるおっさんの足に自分の足を巻き付けてひっくり返る

今度は私が上になり、首に手をかけた



「ぐっ………!!!」



溜まった怒りは全ておっさんの首へぶつけた

みるみる体の力が抜けていって、顔も青ざめていく

あいつの思うつぼなんてごめんだった



だったら私がこのおっさんを殺した方がマシ



やがて動かなくなり、手を離すと、白目を剥いた頭がこてんと横に傾いた





『あっぶな…………』




私が殺らなかったら食われてたとこだった




さて、あいつはなんのためにこんなことしたんだか

うっかりしてた、なんてことは100%有り得ない




『…………居んでしょそこに』




ベットからおりると、ドアに向かって呟く



がちゃりと音がしてドアノブが引き下がった




「…………殺しちゃったかぁ」



ベッド上の死体を見てため息混じりに吐き捨てられる


灰谷蘭

私はお前の玩具になるつもりは無い






『……さいってー』




その張りつけたような笑み

腐るほど腹立つ


空きっぱなしの脱衣所から服を回収してその横を通り過ぎた


「待て待て、なに帰ろうとしてんだ？」




ポンと肩に置かれた手




「お前も梵天の敵だろ」




ああ、そういうことね

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