厄介ファンだと思ってた！【三途春千夜】

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「ひっく、びぇぇぇえん」





威圧感に耐えられなくなったのか、突然泣き出す女の子


ヤツは昨日みたいなドスの効いた声だったけど、声量は小さくて、周りの人は何が起こったのか分かってなかった




「ほ、ほら、行こっか。お姉さんがパパの所まで連れてってあげるからね！」

「ひええええん！こわいよぉぉぉぉ」

女の子は泣きながらスタッフに連れられて言った




嵐が過ぎ去り、目の前にいる嵐の元凶に目を向けた




まるで昨日何も無かったかのようにそいつはニコニコと笑っている


昨日？いや、今日の深夜2時頃だ。
私がこいつに催涙スプレーをぶっかけたのは



なんでキュルキュルお目目が保ててんだよ


仕返しに来たの？


でも私のキャラクターがプリントされたパーカー着て、スローガンも背中にかけてる


いつものオタクモードだった



「みょんたん草ついてる！衣装汚れたら大変！取ってあげる！」


……いやいや、切り替え早いて

よくそのテンションでいけると思ったな。
ガッツリ聞こえてたからね？さっきのダミボイス




『……触らないで』


私もオン状態にも関わらず珍しく地声が出てしまう

小声だし大丈夫か




「……みょんたん？どうしたの？」


『外出たら謝って、あの子に』




久々に癒されてたってのに邪魔されてちょっとオコだった

切れた花冠は自分で払って頭に乗せられたティアラを外す

これ、モノホンの宝石じゃない？めっちゃ輝いてるんだけど

子供相手にコレ見せつけるとか大人気なさすぎて笑っちゃうわ



「……」



私の態度に驚いたのか、そいつは少し固まってた



元気と笑顔と愛嬌で売ってるもんな。本番中にこんな態度取るのなんて初めてだ




「……みょんたんが怒ってる」
「ついにあのファンに痺れ切らしたか…」
「流石にみょんたんでも、そろそろ限界なんじゃない？」




『……』





.





あー、アイドルって面倒くさい




私は宙から降ってきた天使設定だからな

我ながらクソダサいわ






『プレゼントありがとう！ちよちよ、大好きだよ！』






引きつっていた顔を即座に切り替えて笑う

外したティアラをもう一度つけた




『どう？似合ってる？』




こてんと首をかしげてみせる







.






.







「……は？なにそれ、めっちゃ可愛い」




『え！ほんと！やった〜！お空に持って帰るね！』

「うん！創造主様によろしくね！」






.






え、アホらしくない？この会話


ヤクザと枕女ですよ？

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