最後 ページ8
彼女は「必ず戻ってくる」という歌仙の言葉を信じて、
たった一人本丸で待ち続けた
何ヶ月、何年、何十年…
何時しか、彼女は年老いてしまった
彼女は気が散り、何故この広い屋敷で独りで居るのかさえ、
考えるのを止めてしまった
そしてとうとう、足腰も立たなくなり、
一人寝込んでしまった
流石の政府も彼女を何回も現世に戻そうとした
だが、彼女は一向に戻らなかった
そして、世話をするのはこんのすけ
ただ1匹になってしまった
「…もう、私も駄目かしら…」
虚ろな目でポツリと彼女は呟いた
「そんな!そんな、悲しい事を言わないで下さいませ、
審神者様!」
その言葉が聞こえていないのか、彼女はそのまま話を続ける
「こんちゃん、ありがとうね。
私はもう、耳も聞こえづらくなってしまった。
目もあまり良くないの…
貴方には本当に、本当に感謝しているわ。
ありがとう」
こんのすけをワシャワシャと撫でるその手はしわくちゃで、
痩せ細っていた
「嗚呼、桜が綺麗だねぇ、いい匂いがするよ」
「…本当だね、主」
どことなく歌仙が現れた
その小さくしわくちゃになった手を、
変わらない、大きな手が包み込んだ
「……歌仙、歌仙なの…?
遅かったね、待ちくたびれましたよ…
しかも、ちゃんと目と耳が機能しているのは
歌仙がしてくれたのね?」
ゆっくりと歌仙の方に顔を向けた
彼女は優しく、涙を流しながら微笑んだ
「ふふ、言っただろう?
僕は必ず迎えに来るって。
じゃあ、行こうか
____A」
そう言うと歌仙は彼女を抱いて外に出た
風が強くなり、桜の花びらが舞う
そして、二人と一匹の姿を
____何処かに、隠してしまった
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作者名:なゆらー | 作成日時:2017年12月27日 17時