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そして、数十分が経った
肩を上下に息を整えつつも、お風呂へ彼女を引きずる歌仙
「…あはは!楽しかったー…!」
「…そうかい、お気に召されたなら。
ほら、早く入っておいで!」
こうして、彼女は無事風邪を引くことは無かった
彼女の心情を察したのか、雪だるまの事などは何も聞いてこなかった
歌仙は私が何時も近侍にして近くに居たからか、
なかなか消えていく事はなかった
この広い屋敷で二人という少ない人数では管理が怠り、
どんどん廃れていった
だが、とうとうその時が来てしまったのだ
「…歌仙。嫌」
「わがまま言うんじゃないよ、主」
「嫌、嫌、置いて行かないで」
「そう言ったって無理だよ、主。
もうすぐ終わる」
「嫌、絶対嫌。
置いて行かないで、独りにしないで、独りは嫌。
寂しいの、こんな広いところに独りで居るなんて無理よ、耐えられないわ」
嫌々、と赤子の様に駄々をこねる彼女をなだめる歌仙
「主、待っていて。
必ず、君の元に戻ってくるから…
涙を拭いておくれよ、笑顔が見たいんだ。
…ほら、これをあげる。
さ、笑って?」
彼女は何時も強がっていたものの涙を流していた
泣き声をあげること無く、静かに。
歌仙がそう言って取り出したのは藤色の簪だった
それを彼女の髪に挿し、涙を拭う
「…そんなに、歌仙が言うなら。
ええ、頑張って待つわよ
…必ず、ね」
歌仙から受け取った簪と外套を身にまとい、彼女は静かに笑った
そして、歌仙は満足したように…
____小さな粒子となって消えた
「……ぁああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
彼女はその場に崩れ落ち、声をあげて叫んだ
そして、また静かに雪が降り出した____
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作者名:なゆらー | 作成日時:2017年12月27日 17時