検索窓
今日:6 hit、昨日:1 hit、合計:2,114 hit

ページ7

そして、数十分が経った


肩を上下に息を整えつつも、お風呂へ彼女を引きずる歌仙


「…あはは!楽しかったー…!」


「…そうかい、お気に召されたなら。
ほら、早く入っておいで!」



こうして、彼女は無事風邪を引くことは無かった
彼女の心情を察したのか、雪だるまの事などは何も聞いてこなかった




歌仙は私が何時も近侍にして近くに居たからか、
なかなか消えていく事はなかった


この広い屋敷で二人という少ない人数では管理が怠り、
どんどん廃れていった




だが、とうとうその時が来てしまったのだ



「…歌仙。嫌」


「わがまま言うんじゃないよ、主」


「嫌、嫌、置いて行かないで」


「そう言ったって無理だよ、主。
もうすぐ終わる」


「嫌、絶対嫌。
置いて行かないで、独りにしないで、独りは嫌。
寂しいの、こんな広いところに独りで居るなんて無理よ、耐えられないわ」




嫌々、と赤子の様に駄々をこねる彼女をなだめる歌仙






「主、待っていて。
必ず、君の元に戻ってくるから…
涙を拭いておくれよ、笑顔が見たいんだ。
…ほら、これをあげる。
さ、笑って?」





彼女は何時も強がっていたものの涙を流していた
泣き声をあげること無く、静かに。



歌仙がそう言って取り出したのは藤色の簪だった
それを彼女の髪に挿し、涙を拭う



「…そんなに、歌仙が言うなら。
ええ、頑張って待つわよ


…必ず、ね」



歌仙から受け取った簪と外套を身にまとい、彼女は静かに笑った
そして、歌仙は満足したように…







____小さな粒子となって消えた




「……ぁああああああああああああああああああ!!!!!!!!」



彼女はその場に崩れ落ち、声をあげて叫んだ
そして、また静かに雪が降り出した____

最後→←花



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (6 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:なゆらー | 作成日時:2017年12月27日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。