僕なりの愛で君を守るよ ページ41
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ふと目が覚めた。窓の外はまだ真っ暗、恐らく夜明け前だろうか……体を起こし、トイレへ寄ろうとした時、下のリビングから誰かの話し声が聞こえた。……お父さんと拳くん?
足音を立てないようにゆっくりリビングのドアの前まで向かうと何かを話している2人。悪いとは思いつつ、そっとリビングの2人の話し声に耳をすませた。
「僕は拳くん、君にAの相手として反対している訳では無いんだ。小さい頃から家族も同然で一緒に育ってきた君なんだ。自分の子供のように君のことは大切な人だと勝手に思っている」
「そんなに大切に思ってくださって嬉しいです」
「…だからなのかね。君にとってもあれは、辛い記憶だろう。幸いにもAは記憶をなくしてしまっているから…だけど、君はそうじゃない。Aといることであの頃の記憶が蘇ってお互いがお互いを苦しめ合わないか、Aも拳くんも辛い人生を送ることにならないか、それが、心配なんだ」
話の内容は、昨日母親から寝る前に聞いた話のまんまだった。再びぽわっ…と心が温かくなる気がした。
「…確かに、あの記憶は僕にとって人生で2度とない辛い記憶となるでしょう。ですが、1番辛いのはAさんなはずです。そして、僕の辛さはAさんのご両親にも及ばないはずです。それくらい、Aさんもご両親も辛い経験をなさってしまった…」
「ですが、だからといって僕は忘れたくありません。決して、忘れません。目を背けません。きちんと向き合います、支えます。それが…僕がAさんと交わした約束なんです」
「なにか約束をしたのかね…?」
「はい、事件にあわれる前僕が高校生クイズの全国大会に出場した時のことです」
「ああ、出ていたね。家族でテレビでの君の勇姿をしかと焼き付けていたよ」
「まだあの時は高校生ですし、未成年の、立場ではありますが…クイズで惨敗した僕にAさんは、私はずっと拳くんの味方だよ。だから私がずっとそばに居るね、何があっても。とAさんに言われたんです」
「だから、僕もAさんのそばにいる。ずっと彼女を支える、守る。と心で誓っていたんです」
「そばに居ることも、守ることも全然出来ませんでしたが……だからこそ、今度は何が何でも守り抜く、一生Aさんのそばにいて彼女を支えたい、Aさんと一緒に幸せになりたいって強く固く思っているんです…!」
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作者名:りんご | 作者ホームページ:
作成日時:2020年7月29日 19時