それぞれが動き出す ページ38
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拳くんに想いを伝えたあの飲み会から、時が経ち記憶は無いながらも拳くんとは良い関係を築けている。
もちろん、QuizKnockも活躍は右肩上がりで遂にひとつの企業として世の中に顔向けする日がやってきた。
「オフィスも新しくなったし」
「これからは、QuizKnockの社員かぁ」
お昼時、近くのファミレスでランチをつまみながらここ最近のQuizKnockについてしみじみ語ってしまう。
「これで、やっとお父さんとお母さんも安心してくれるかな」
「今まで不安にさせてたの？」
「やっぱり、QuizKnockっていうウェブメディア自体よく分かってない世代だしね。両親は思い描いていたものじゃなかったと思うの」
「それもそうか」
クルクルとフォークにパスタを巻き付けて口に運ぶ。ここのボロネーゼは、本当に美味しい。
「だけど、QuizKnockを世間にも両親にも広めて認めてもらうのが社員の役目ってもんでしょ！もっともっと大きいものにしていきたいし、身近に感じてもらいたい！だから、まずは両親を虜にさせないとね！」
「心意気が素晴らしいね」
「社員ですから」
「それは、俺もだけど」
母親は既に虜なのかもしれないけど、拳くんの事があって色々心配させているのだ。父親に至っては、きちんと話すら出来ていない…
「そろそろ、徳島帰ろうかな〜」
「あ、その事なんだけどさ」
「うん？」
いつになく真剣な眼差しでこちらを見てくる拳くん。思わずフォークの手が止まる。
「俺もそろそろ実家に帰ろうかと思ってて。Aちゃんを香川の両親に会わせたいんだ」
「えっ…拳くんの両親に？」
「うん、俺もAちゃんのご両親に会って話がしたい」
会って…くれるかな？
少し不安そうな笑顔をする拳くん。あの事件以来きっと疎遠になってしまっていたのだろう。無理もない…当時の記憶を思い出したくないだろうし。
でも、私も拳くんのご両親には会ってみたい。話がしてみたい…拳くんもきっと同じ気持ちなのだろう。
「うん、お母さんに聞いてみるね。今度のGW辺りにどう？」
「うん、それでいいと思う。俺も実家に聞いてみるよ」
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作者名：りんご | 作者ホームページ：
作成日時：2020年7月29日 19時
