ハナニラの栞 ページ33
【ハナニラ】悲しい別れ
(山本side)
Aちゃんが電話、と言って執務室から出ていってから僕はデスクで謎解きの作成をしていた。すぐに、Aちゃんが戻ってくると思ったのに何故か戻ってきたのは伊沢さんだけで
「あれ?伊沢さん、Aちゃんはどうしたんですか?」
何も考えずにそう素早く聞いてしまった。すると、伊沢さん、鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をしている。伊沢さんによるとどうやらAちゃんは急用を思い出してそのまま帰ってしまったみたいだった。
「そうですか…。折角久しぶりに会えたのにな…」
誰にも聞こえないような小さな声で、ボソッと呟く。久しぶりと言っても僕が感じてるだけで、本当は適切な頻度というか普通なのかもしれない。だけど、何故か1日会えないだけで次はいつ会えるか、早く会いたい。そう思うようになっていた。その理由もこの前須貝さんと話してはっきり分かったのだけれども。
チラッと鞄の中に入った、あの日ピオニーが落としたハンカチに目をやる。ピオニーを使うみたいでなんだか申し訳ないけど、あの日あった出来事をピオニー好きであるAちゃんに話が出来るな、と思っていたが生憎そのチャンスは今日は訪れなかった。
明日辺りまたAちゃんは来るだろうか。そんな淡い期待も翌日伊沢さんによって阻まれる事をこの時の僕はまだ知らなかった。
.
「えっ……辞めるんですか?QuizKnockを…?」
「あぁ…」
一瞬、伊沢さんが何を言っているのか分からなかった。それは、僕以外の今日オフィスに来ていた他のメンバーも同じようで
福良さんが仕事を任せすぎたかも…と落ち込んでいたが、多分それは違う。任された事をとても誇らしげに話してくれたし、何より動画で自分の曲が使われたことに一番喜んでいたのはAちゃんだ。福良さんや、仕事量の多さで辞めたとは思えない。
「…じゃあ、そういう事だから」
「伊沢さん!待ってください!」
執務室から出ていく伊沢さんを僕は思わず追いかける。
「どうして…突然辞めるだなんて…何か理由でもあるんですか?」
「…彼女にも色々と事情があるんだ…!分かってやれ、山本!」
後姿の伊沢さんでも、顔が見えなくてもどこか悔しさを滲ませたそんな雰囲気が読み取れる。
だけど、僕はAちゃんの辞めなくてはいけなくなった事情を知らないんだ。何故彼女が辞めなくてはいけなくなったのか…
ただただ、遠ざかっていく伊沢さんの背中をぼーっと見つめる事しか出来なかった。
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りんご(プロフ) - 葉月さん» ありがとうございます!素敵と言って貰える作品作りが出来て良かったです!次回作も構想練ってますので、ぜひお読み頂けたら嬉しいです(*^^*) (2020年7月10日 12時) (レス) id: cb54059665 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - 名無し21900号さん» 完結致しました!最後までお付き合い頂き、コメントまで...感謝致します!次回作まで楽しみにしてくださって嬉しいです…!ぜひ頑張りますので、次回作でも会えたら嬉しいです(*^^*) (2020年7月10日 12時) (レス) id: cb54059665 (このIDを非表示/違反報告)
葉月(プロフ) - 完結おめでとうございます(謎)!語彙力がないので上手く言えませんが凄く素敵です!とても面白かったです! (2020年7月10日 0時) (レス) id: 17b218ff81 (このIDを非表示/違反報告)
名無し21900号(プロフ) - 完結しましたね、、!更新されるのがとっても楽しみでした!次回作にも期待してます、、! (2020年7月10日 0時) (レス) id: 92c0a47f28 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - 葉月さん» ありがとうございます!そう言ってくださる方がいらっしゃるだけで頑張れます(*^^*) (2020年6月20日 17時) (レス) id: cb54059665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんご | 作者ホームページ:
作成日時:2020年6月13日 12時