居候がおりまして。ver.3【白膠木簓】

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「さあ！皆さんお待ちかね！クリスマスにこの方が来てくれました！！」


「はいどうもー！今年大注目のピン芸人、白膠木簓でーす！」




サンタやないでー簓やでー、とステージに上がれば俺のターン。
わーとかきゃーとか歓声作るなんて余裕のよっちゃんや。
案の定観客の視線を独り占め。





「クリスマスやのにお客さんぎょーさん居てはりますなあ！さては皆さんクリぼっちでっか！？」
「そら簓もやろ！！」
「あたた！痛いとこつきますわ！ゆーて兄さんもやん！」





ショッピングモールのイベントに付き合いのある先輩が居たのは有り難かった。
通りすがりのカップルも親子連れも立ち止まって俺に手を振る。






オオサカでは名を馳せてもまだまだこっちじゃ若手。





「てなわけで！今年の笑い納めは簓さんで勘弁してやー！」





(こういうイベントで知ってもらわんと)






武者震いも悪くない。

仕事に慢心する。

口はいつもよりよく回る。



俺やって考えとんねん。





めっちゃ笑かして、





「そん時言うたんですわ！」
「なんて？」





もっと笑かして、





「扇子だけにハイセンス〜！っつって！」
「そらただの親父ギャグやろ！」





思い出に浸る暇もないくらい頭を笑い声で埋め尽くしたら、





「司会者さん！はよ簓の口塞がんとトーク終わらんで！」


「これがほんまのタイムイズマネー！

トークの分のギャラはきっちり払ってもらいま、───」





Aちゃんを忘れられるんやないかって、ずっと考えとるんや。








この二年、ほんまに苦しかった。






「っ。」






約束も守れなかった。


バイバイも言えなかった。


寝ても覚めても抱きしめた彼女の香りが忘れられない。


なにより、






「─────なんで……？」






好きな子の涙も拭えんで置いてけぼりに。








「おい、簓？？」


「…………うそや」


「は？」




あの時の衝撃は今でも忘れられない。



舞台の上に小さな光を見たと思ったら

昔つるんでいた男の顔が見えて、






「────A、ちゃん……？」






その隣にどうしようもなく愛しい彼女が居たのだから。






▽どうやっても俺は君から離れられない


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